皇后狹穂姫の告白

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垂仁天皇(八)皇后狹穂姫の告白

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原文

五年冬十月己卯朔、天皇、幸來目居於高宮、時天皇枕皇后膝而晝寢。於是、皇后、既无成事而空思之「兄王所謀、適是時也。」卽眼淚流之落帝面、天皇則寤之、語皇后曰「朕今日夢矣、錦色小蛇、繞于朕頸、復大雨從狹穗發而來之濡面。是何祥也。」皇后、則知不得匿謀而悚恐伏地、曲上兄王之反狀、因以奏曰「妾、不能違兄王之志、亦不得背天皇之恩。告言則亡兄王、不言則傾社稷。是以、一則以懼、一則以悲、俯仰喉咽、進退而血泣、日夜懷悒、無所訴言。唯今日也、天皇枕妾膝而寢之、於是、妾一思矣、若有狂婦、成兄志者、適遇是時、不勞以成功乎。茲意未竟、眼涕自流、則舉袖拭涕、從袖溢之沾帝面。故今日夢也、必是事應焉、錦色小蛇則授妾匕首也、大雨忽發則妾眼淚也。」
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現代語訳

即位5年冬10月1日。
垂仁天皇は來目(クメ=地名・大和国高市郡)に行って高宮(タカミヤ=地名か高い宮か不明)にいました。そのときに、天皇は皇后の膝枕をして昼寝をしていました。皇后は事(=兄に頼まれた天皇暗殺)を遂げられずにいました。

虚しく思い、「兄王(コノカミノオオキミ)が謀反を起こすのは今」と思うと、涙が流れて帝(ミカド=天皇)の顔に落ちました。天皇は驚いて、皇后に言いました。

「わたしは今日、夢を見た。錦の小蛇(スコシキオロチ)がわたしの首に絡まった。また、雨が狭穂(サホ)から飛んできて顔を濡らすという夢を見た。これはどういう意味だろうか」

皇后は謀反の計画を隠せないと知り、怖気付いて地面に伏して、曲(ツマビラカ=詳細)に兄王の反状(ソムクコト)を話しました。

「わたしは兄王の志(ココロ=謀反の考え)を間違っていると言えませんでした。また天皇の恩(ミウツクシビ)に背くことも出来ませんでした。言わなければ兄王が死んでしまいます。言わなければ社稷(クニ)を傾けてしまいます。これまで、あるいは恐れ、あるいは悲しみました。伏せたり、天を仰いでむせび泣き、行くことも退くこともできず泣いていました。昼も夜も言葉にできないほどに鬱々としていました。
そして今日、天皇がわたしの膝枕で寝ていました。それでわたしは思ったのです。もしもわたしが狂った女で、兄の志(ココロ=謀反の意思)を成すならば、ただいまこの時に簡単に成し遂げるしかない、と。そんな決心がまだつかないうちに、涙が自然と流れておちました。すぐに袖を挙げて涙を拭いたのですが、袖から漏れて、天皇の顔を濡らしました。(天皇が)今の夢を見たのは、この事でしょう。錦の小蛇はわたしに授けられた匕首(ヒモカタナ=あいくち=小刀)です。大雨(ヒサメ)がたちまち降ったのは、わたしの涙です」
古事記の対応箇所
垂仁天皇の夢
サホビメの告白
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解説

夢について
科学とは程遠い時代なのに、「涙」が天皇の顔に当たったことが、夢の中で「雨」に変換されるということを、古代の人は知っていたのですね。
雨が狭穂から飛んできて顔を濡らすという夢
ここでの「サホ」は暗にサホビメとサホビコの兄妹を指しているのですが、それは「暗に」であって、文意としては、「粒が細い稲の穂」という意味かと思われます。粒が細いというのが、品種なのか、成長途中でまだ粒が細いのか? は分かりませんが、日本は「幼い」ことが「霊威」を持つという考えがあるので、おそらくは「成長途中」という意味ではないかと。
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