君主を殺すは義に反するが功に報いないは信に反する

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君主を殺すは義に反するが功に報いないは信に反する

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読み下し文

故、曾婆訶理を率て倭に上り幸す時に、大坂の山口に到りて以爲いしく、「曾婆訶理は吾が爲に大き功有りと雖ども、既に己が君を殺しつること、是、義ならず。然れども其の功を賽いずは信無しと謂いつべし。既に其の信を行わば、還りて其の情に惶りむ。 故、其の功を報ゆと雖ども、其の正身を滅さん」。是を以ちて曾婆訶理に詔らさく、「今日は此間に留りて、先ず大臣の位を給りて、明日上り幸さん」。其の山口に留りて、即ち假宮を造りて忽ちに豊樂を爲て、乃ち其の隼人に大臣の位を賜り、百官に拜ましめき。 隼人、歡喜びて、志を遂げつと以爲いき。 爾くして其の隼人に詔らさく、「今日、大臣と同じ盞の酒を飮まん」。共に飮む時に、面を隱す大鋺に其の進むる酒を盛りき。ここに、王子、先ず飮み、隼人、後に飮みき。 故、其の隼人の飮める時に、大鋺、面を覆いき。 爾くして、席の下に置ける劍を取り出して、其の隼人が頚を斬りて、乃ち明日に上り幸しき。故、其の地を號けて近つ飛鳥と謂う。 倭に上り到りて詔らさく、「今日は此間に留りて祓禊爲て、明日參い出でて神の宮を拜まん」。故、其の地を號けて遠つ飛鳥と謂う。故、石上の神の宮に參い出でて、天皇に奏さしめしく、「政は既に平らげ訖りて參い上りて侍り」。爾くして、召し入れて相語りき。
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現代語訳

(水歯別命は)曾婆訶理(ソバカリ)を率いて大和に上ったときに、大阪の山口(ヤマノクチ)に到着して思いました。
「曾婆訶理(ソバカリ)は私のために大きな功(イサオ=功労)があるといっても、自分の君主を殺しているのは、義(コトワリ)に反している。しかし、その功に報いないのは信(マコト=信義)に反している。信(マコト)を行えば(=功に対して報償を与えること)、その情(ココロ=主君に反する心)が恐ろしい。そこでその功に報いるが、体を滅ぼしてしまおう(=つまり殺すということ)」
それで曾婆訶理(ソバカリ)に詔(ミコトノリ)しました。
「今日はここに留まって、まず大臣(オオオミ)の位を授けてから、明日大和へと上ることにしよう」
その山口(ヤマノクチ)に留まり、すぐに仮宮(天皇が宿泊する仮の宮殿)を作って、すぐに豊楽(トヨノアカリ=酒宴)を開いて、その隼人に大臣の位を預け、百官(モモノツカサ=官僚・役人)に拝礼させました。隼人は歓喜して「志を遂げた」と思いました。それからその隼人に詔しました。
「今日、大臣と同じ杯の酒を飲もう」
共に飲むときに顔が隠れるほどの大きな大鋺(オオマリ=鋺は鉄のお椀)に勧める酒を守りました。王子がまず先にのみ、隼人は後で飲みました。その隼人が飲んだ時に大鋺(オオマリ)が顔を覆いました。それで席の下に置いた剣を取り出して、その隼人の首を切って殺して、その翌日に大和に登って行きました。それでその土地を「近つ飛鳥」といいます。大和に上って到着して詔して言いました。
「今日はここに留まって、祓禊(ミソギ)をして、明日参上して神宮で拝礼しましょう」
それでその土地を名付けて遠つ飛鳥といいます。石上神宮(イソノカミカミノミヤ)に参り出て天皇に申し上げました。
「政(マツリゴト)は既に平定し終わって参上しました」
それで(履中天皇は)呼び寄せて話し合いました。
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解説

武闘派の反正天皇
履中天皇に「墨江中津王(スミノエノナカツミコ)を殺してこい」と言われて、命令通りになかなかの策略で殺してしまう水歯別命(ミズハワケノミコト)。水歯別命はのちの反正天皇です。

反正天皇は同母兄を曾婆訶理(ソバカリ)に殺させ、その曾婆訶理(ソバカリ)を大阪の山口で酒宴の最中で殺害。この殺害には儒教の考えが入っていて、儒教では上下関係が大事で、君主を裏切るというのは絶対にあってはいけないことです。しかし、自分の命令に応じて君主を殺したものの論功に応じないとなるとこれこそ「不徳」というものです。その間を取って、「大臣に任じてから殺す」という、なんか理解不能の行動を取ってしまいます。

まぁ、それはいいとして。
酒宴と殺害
神武天皇の東征での「料理人の不意打ち」やヤマトタケルの熊襲征伐での「クマソタケル兄弟を征伐」といったように「宴会で殺す」というのは日本の古代の神話ではスタンダードなあり方なんじゃないかと思います。これは日本人が神にお願いするときに料理を神に振舞っていたからです。美味しい料理ほどに神は感動し、戦争に勝ちやすくなる。だから料理が上手い氏族は料理人でありながら同時に戦争屋でもあった。そこが宴会と戦争が結びつく理由でしょう。
天皇が殺害?!
天皇は「スメラミコト」とされ、「スメラ」は清らかという意味です。天皇は決して穢れてはいけないのですね。ところが、この段で水歯別命…のちの反正天皇は人を殺しています。その後、禊をして穢れを祓っているとはいえ、剣で人を殺しているのです。
これはマズイ。
マズイはずなんです。
反正天皇は即位して5年で死亡。そして「皇后」を置かず、子孫は天皇となりませんでした。わたしは、この無皇后、無子孫という理由が曾婆訶理(ソバカリ)殺害の穢れだったんじゃないか?と思っています。
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