菟餓野の鹿と佐伯部の移卿

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仁徳天皇(二十六)菟餓野の鹿と佐伯部の移卿

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原文

秋七月、天皇與皇后、居高臺而避暑。時毎夜、自菟餓野、有聞鹿鳴、其聲寥亮而悲之、共起可怜之情。及月盡、以鹿鳴不聆、爰天皇語皇后曰「當是夕而鹿不鳴、其何由焉。」明日、猪名縣佐伯部、獻苞苴。天皇令膳夫以問曰「其苞苴何物也。」對言「牡鹿也。」問之「何處鹿也。」曰「菟餓野。」時天皇以爲、是苞苴者必其鳴鹿也、因語皇后曰「朕、比有懷抱、聞鹿聲而慰之。今推佐伯部獲鹿之日夜及山野、卽當鳴鹿。其人、雖不知朕之愛以適逢獮獲、猶不得已而有恨。故、佐伯部不欲近於皇居。」乃令有司、移鄕于安藝渟田、此今渟田佐伯部之祖也。
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現代語訳

(即位38年)秋7月。天皇と皇后は高台(タカドノ)に居て避暑していました。そのとき、毎夜(ヨナヨナ)、菟餓野(トガノ=摂津国八田郡菟餓野、もしくは現在の兵庫県神戸市兵庫区夢野町?。未詳)から鹿の鳴き声が聞こえました。その鳴き声は空しく悲しげでした。それで二人は憐れに思いました。月尽(ツゴモリ=月末)になると鹿の鳴き声が聞こえなくなりました。天皇は皇后に語って言いました。
「この夕方になって鹿は泣かなくなった。これはどうしたことだろうか」
翌日、猪名県(イナノアガタ=摂津国河辺郡為奈郷=現在の兵庫県尼崎市東北部)の佐伯部(サエキベ)が苞苴(オオニエ=献上する食料)を献上しました。天皇は膳夫(カシワデ=料理をする人)に命令して問いました。
「この苞苴(オオニエ)はなんだ?」
答えて言いました。
「牡鹿(シカ)です」
また問いました。
「どこの鹿か?」
答えて言いました。
「菟餓野(トガノ)の鹿です」
そのとき、天皇は思いました。この苞苴(オオニエ)は必ず泣いた鹿だと思いました。それで皇后に天皇は語って言いました。
「朕(ワレ)、この頃、物思いにふけることがあったのだが、鹿の声を聞いて慰められた。今、佐伯部が鹿を獲った日夜(トキ)及び山野を推測するに、どうも泣いた鹿ではないかと。その人は朕(ワ)がその鹿を愛していることなど知らないで、たまたまに鹿を捕えたといっても、恨めしい気持ちは止められないものだ。だから佐伯部は皇居に近づけないようにしたい」
それで有司(ツカサ=官僚・役人)に命令して、安芸の渟田(ヌタ=安芸国沼田郡沼田郷=現在の広島県竹原市)に移卿させました。これが現在の渟田の佐伯部の祖先です。
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解説

現代でもありそうな上司の機嫌を損ねて異動という話
佐伯さんという人が居て、佐伯が「オオニエ」という献上の品を提出した。中身はなんと、天皇が毎晩、その鳴き声を楽しみにしていたという、お気に入りの「鹿」の肉。天皇は佐伯を嫌って安芸(=現在の広島)に出向させちゃった。というお話。
佐伯とは
佐伯ってのは実はヤマトタケルの時代に東北から連れてきた「蝦夷」です。この蝦夷が熱田神宮に住み、騒がしいから三輪山に異動。そこでも問題を起こしたから播磨・讃岐・伊予・安芸・阿波に飛ばされと書いてあります。

蝦夷と日本人
日本人は動物の屍体を嫌います。穢れているからです。だから江戸時代まで日本人は肉を食べていませんでした。ここで献上された肉は「鹿」の肉で、天皇には食べられなかった。それで、異動したんじゃないか?と思うのです。天皇は「スメラミコト」と読みます。「スメラ」とは清らかという意味です。肉なんて食べたら、偉いことです。天皇が天皇の存在根拠を失ってしまいます。しかし、そんなことは御構い無しに佐伯は肉を献上した。なにせ佐伯は蝦夷で「肉を食べていた」からです。
毛人
毛人と書いても「エミシ」と読みます。これは蝦夷が毛深かった、からではなく、毛皮を身につけていたからでしょう。毛皮は当然、動物の屍体から獲ったもの。彼らは動物を普通に食べていたはずです。いや、日本人が「動物を食べない」ことの方が変わっているんです。

それで佐伯は何も知らずに鹿の肉を献上した。知らなかったというよりは「ま、いいか」的な。ざっくばらんに献上しちゃった。それで飛ばされた。これは日本と蝦夷の「文化差異」が起こす問題だったんでしょう。もしも日本が完全な封建国家だったら、佐伯は殺されていたはずです。でも、文化差異を融和する折衷案で中央(畿内)から離れた西の国へ異動にした。それを「ひどい」と思うかもしれませんが、安芸の国造は「佐伯」で、佐伯は現在でも広島の名士なのです。この異動は正しい判断だった、と思います。
移卿
この移卿という言葉には、「犯罪者が被害者の遺族から復習を受けるのを避ける為に遠いところに移動させる」という意味があります。つまり、それだけ佐伯のやったことは罪が深かったということです。
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