二つの狼・秦大津父を大蔵省に

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欽明天皇(二)二つの狼・秦大津父を大蔵省に

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原文

於是、忻喜遍身、歎未曾夢、乃告之曰、汝有何事。答云「無也。但臣向伊勢、商價來還山逢二狼相鬪汙血、乃下馬、洗漱口手、祈請曰『汝、是貴神而樂麁行。儻逢獵士、見禽尤速。』乃抑止相鬪、拭洗血毛、遂遣放之、倶令全命。」天皇曰、必此報也。乃令近侍優寵日新、大致饒富。及至踐祚、拜大藏省。

現代語訳

秦大津父を見つけ、とても喜ぶ気持ちが体に満ちました。珍しい夢だと褒めました。それで言いました。
「お前は、何事かあったか?」
答えて言いました。
「なにも事はありません。ただわたしめは伊勢に向かい、商売をして帰って来るときに、山に二つの狼が互いに噛み付き合い、血に濡れているのに逢いました。すぐに馬から下りて、口と手を洗い漱いで、祈り請いて言いました。
『お前は、貴い神で荒々しい行動を好む。もし狩人に会えば、捕らわれるのは、極めて速やかで簡単なことでしょう』
と言いました。すぐに狼は戦い合うことを止めて、血に濡れた毛を拭い洗い、ついに許し、命は失われませんでした」
天皇は言いました。
「必ずこの報いがあるだろう」
すぐに秦大津父を近くに仕えさせて、厚く寵愛していました。すると大いに賑わい豊かになりました。欽明天皇が即位することになったときに、秦大津父を大蔵省(オオクラノツカサ)に任命しました。
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解説

狼と神
二匹の狼のことを秦大津父は「貴い神」と呼んでいます。つまり狼は「神」ということです。その狼の争いを止めた大津父の話を聞いた欽明天皇は「これは報いがあるぞ」と考えました。争いを止めた大津父に、そのお礼に何かいいことがあるにちがいない。神の加護があるはずだ。だから側近として仕えさせたわけです。

で、どうして狼が神なのか?

日本人は山に穀物神が住んでいると考えていました。その穀物神が里の畑に下り、畑に宿ってその神の霊威を植物に注いで穀物が育つと考えていました。ではどうやって山の神は里にやってくるのか? それが「動物」だった。そう考えた地域が多かった。だから山の動物である狼は「神」でもあるわけです。

奈良の鹿や、稲荷神社の狐というのは、そういう神の依代としての信仰の結果でしょう。
秦大津父はなぜ大蔵省になったか?
実は今後、朝鮮系氏族とされる人たちは大和朝廷の大蔵省に強く関係していきます。この物語の中では、狼の争いを止めた大津父は狼の神の加護があり、豊かになった。だから、大蔵省に任命したよ、ということになっていますが、それだけではないでしょう。

別の理由があったのだと思います。
それは「筆」です。

筆は動物の毛から作ります。動物の毛は動物の屍体から取るもの。動物の屍体は穢れていて日本人が忌み嫌うものです。だから日本人は筆を扱えなかった。しかし朝鮮の文化にまみれた秦氏は違った。この筆があることで帳面が残せるし、合理的な経営ができるようになった。それが大蔵省抜擢の理由ではないのかと考えています。あくまで私見ですよ。
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