馬飼首歌依の獄死と殿の火災

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欽明天皇(七十九)馬飼首歌依の獄死と殿の火災

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原文

是月、或有譖馬飼首歌依曰「歌依之妻逢臣讚岐、鞍韉有異。就而熟視、皇后御鞍也。」卽收廷尉、鞫問極切、馬飼首歌依乃揚言誓曰「虛也、非實。若是實者、必被天災。」遂因苦問、伏地而死。死未經時、急災於殿。廷尉、收縛其子守石與中瀬氷(守石・名瀬氷、皆名也)、將投火中投火爲刑、蓋古之制也、呪曰「非吾手投、以祝手投。」呪訖欲投火、守石之母祈請曰「投兒火裏、天災果臻。請、付祝人使作神奴。」乃依母請、許沒神奴。

現代語訳

(即位23年)この月(6月)にある人が馬飼首歌依(ウマカイノオビトウタヨリ)のことを悪く言いました。
「歌依(ウタヨリ)の妻の逢臣讚岐(オウノオミサヌキ)の鞍の韉(シタグラ=鞍の下の覆い)に異変があった。ツラツラとよくよく見てみると、皇后の御鞍(オオミヨソオイ)だった」
すぐに収監して廷尉(ヒトヤツカサ=刑吏=刑罰を与える役人)に授けて、拷問して問い責めました。馬飼首歌依(ウマカイノオビトウタヨリ)は揚言(コトアゲ)して誓って言いました。
「虚言だ! 真実では無い! もし、これが真実ならば、必ず天災の被害を受けるでしょう!」
苦しめ問い責めたことで、地に伏して死んでしまいました。死んでまだ時が経っていないうちに、急に殿(オオトノ=天皇の宮殿)に火災がありました。廷尉(ヒトヤツカサ)はその子の守石(モリシ)と名瀬氷(ナセヒ)を収監し縛り、
守石と名瀬氷は名前です。

火の中へと投げ入れようとして
火に投げ入れて刑(ツミ=刑罰)とするのは、おそらくは古くからの制(ノリ=制度)です。

呪いの言葉を言いました。
「わが手で投げ入れるのではない。
祝(ハフリ=神職)の手で投げ入れるのだ」
呪いの言葉を言い終わって、火に投げ入れようとしました。守石の母が祈り請願して言いました。
「児(コ)を火の中へと投げ入れれば、天災は結果としてやって来るだろう。お願いです。祝人(ハフリベ=神職)に付けて、神奴(カムヤッコ=神社に使える奴隷)にしてください」
それで母の請願によって許して神奴としました。
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解説

歌依という馬飼に悪い噂が立ちました。
「歌依の妻の馬の鞍の下に敷く布がなんだか変だなと思ってよく見てみると、皇后の鞍だった…」
歌依は馬飼です。馬を管理する人物です。この時代では馬飼というのは卑しい仕事でした。その人物の妻の馬に皇后の鞍が乗っかっていた。これは皇后をバカにしている! となって捉えて拷問した。歌依が言うには「嘘だ! やってない! もしも真実ならば天災が起きるだろう!」

いや、これはおかしい。
噂が真実ならば天災が起きる、ってことはその後、宮殿が火災に見舞われたということは、この噂は本当だったということになる。これってば逆でしょう。まぁ、ともかく。

火災があった。歌依は罪人だ。しかも、天災を呼ぶほどの霊威がある。そこで、この子供達も罪として、火の中に投げ込んで殺すことにした。この時、刑罰執行役人が
「俺が殺すんじゃない。
神社の神職のやつが殺すんだぜ」
と言葉で言います。
これは歌依の呪いと同じで、日本人の言霊信仰の結果です。実際には刑罰執行役人が殺すのに、「俺が殺すんじゃないぜ」と前もって言っておくだけで、実際に殺したのは刑罰執行役人じゃなくなるという便利なものです。

しかし、児の母が、「神の奴隷」にしてください。と哀願したことで許してしまいます。これって不思議ですよね。罪深い歌依の子が、結果的とはいえ命が助かり、神奴になる。歌依は馬飼ですから、そもそもあまり地位の高い人ではありません。そう考えるとこの子供達はさほど損をしていない。

この根本にあるのは御霊信仰というか怨霊信仰というか、祟り信仰でしょう。祟りが怖いから殺さないという日本人の性質でしょう。
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