捕鳥部萬の逃亡

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崇峻天皇(七)捕鳥部萬の逃亡

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原文

物部守屋大連資人、捕鳥部萬(萬、名也)將一百人守難波宅、而聞大連滅、騎馬夜逃、向茅渟縣有眞香邑、仍過婦宅而遂匿山。朝庭議曰「萬、懷逆心、故隱此山中。早須滅族、可不怠歟。」萬、衣裳幣垢、形色憔悴、持弓帶劒、獨自出來。有司、遣數百衞士圍萬。萬、卽驚匿篁藂、以繩繋竹引動、令他惑己所入。衞士等、被詐、指搖竹馳言、「萬在此。」萬、卽發箭、一無不中。衞士等、恐不敢近。萬、便弛弓挾腋、向山走去。衞士等、卽夾河追射、皆不能中。

現代語訳

物部守屋大連の資人(ツカイビト=従者)の捕鳥部萬(トトリベノヨロズ)は…
萬は名前です。

100人を率いて難波の物部守屋の宅(イエ)を守っていました。大連(=物部守屋)が滅んだと聞いて、馬に騎乗して夜に逃げて、茅渟県(チヌノアガタ)の有真香邑(アリマカムラ)に行きました。婦人の宅(イエ)を過ぎて、山に隠れました。朝廷は話し合って言いました。
「萬…逆心(サカシマナルココロ=反逆する意思)を抱いている。だからこの山に隠れた。速やかに一族を滅ぼすべきだ。怠るなよ」
萬は衣裳(コロモ)は破れて垢がつき、顔色は憔悴しきって、弓を持ち、剣を腰に帯びて、一人で自ら出て来ました。有司(ツカサ=役人)は数百の衛士(イクサビト=兵士・衛兵)を派遣して、萬を囲みました。萬は驚いて篁藂(タカブル=竹林)に隠れました。縄を竹につけて、引き動かして、他人に自分が入ったところを惑わせました。衛士たちは欺かれて、揺れる竹を指差して、走って言いました。
「萬はここにいるぞ!」
萬はすぐに矢を放ちました。一つとして当たらないものはありませんでした。衛士たちは恐れて近づきませんでした。萬は弓を外して、脇に挟んで、山に向かって逃げ去りました。衛士たちは川を挟んで、追いかけて射ました。すべて当たることは出来ませんでした。
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解説

古代日本のランボー
物部守屋の従者の捕鳥部萬…名前から考えると、鳥を取る…弓の名手の家系だったのでしょう。彼が物部守屋の敗北を知って、当時、物部氏の領地のあったと思われる茅渟県の有真香邑に逃げました。「婦人の宅」というのは、萬か物部守屋かの婦人の宅のことでしょう。このあたりは、匿ってもらおうと当てにして行ったけど、断られたか、逆に巻き込まないように通り過ぎたか…そこいらへんは分かりません。

山に隠れた萬を、朝廷の兵士が囲むのですが、忍者のようなテクニックで、数百の兵士をたった一人で翻弄。すごいぞ萬。

このあたりは、どうも演出というか史実というよりは演劇の脚本に近い。おそらく、萬の活躍は神楽か何かで上演されたのではないかと思うのですね。その脚本を日本書紀に起こした。だから、萬の逃亡劇は史実ではない…ということではなく、史実をもとにした「物語」だろうというのが個人的な見解です。
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