皇極天皇(二十二)移風の兆・3首の歌

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皇極天皇(二十二)移風の兆・3首の歌

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原文

是月、国內巫覡等、折取枝葉、懸掛木綿、伺大臣渡橋之時、爭陳神語入微之說。其巫甚多、不可具聽。老人等曰、移風之兆也。于時、有謠歌三首。其一曰、
波魯波魯儞、渠騰曾枳舉喩屢、之麻能野父播羅。
其二曰、
烏智可拕能、阿娑努能枳々始、騰余謀作儒、倭例播禰始柯騰、比騰曾騰余謀須。
其三曰、
烏麼野始儞、倭例烏比岐例底、制始比騰能、於謀提母始羅孺、伊弊母始羅孺母。

現代語訳

(即位3年6月)この月。国内の巫覡(カムナキ=男女の神官)たちは枝葉(シバ)を折って取って、木綿(ユフ)をシデのように掛けて、大臣(オオオミ)が橋を渡るときを伺って、先を争って神語(カムコト)の微妙な説(コトバ)を陳述しました。その巫(カムナキ=女性の神官)はとても多かったです。詳細に聞くことが出来ませんでした。老人たちは言いました。
「時流の変わる兆しだ」
その時、謠歌(ワザウタ)が3首ありました。
その一つ目は
遥遥に 言そ聞ゆる 島の薮原(ヤブハラ)
歌の訳遥か遥か遠くから、話し声が聞こえる。島の薮の原っぱから。

その二つ目は
遠方(オチカタ)の 浅野(アサノ)の雉(キギシ) 響(トヨモ)さず 我(ワレ)は寝しかど 人そ響(トヨモ)す
歌の訳遠く彼方の草丈の低い浅い野原の雉(キジ)は、声を立てて響く声で鳴く。私は静かに声を立てないで寝ているというのに、人が騒いでいるよ。

その三つ目は
小林(オバヤシ)に 我を引入て 姧(セ)し人の 面(オモテ)も知らず 家も知らずも
歌の訳小さな林に、私を引き入れて、犯した人の顔も知らない。家も知らない。
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解説

国内の巫覡…からは、同じ文章が以前にもある
これは意図的に重複させることで、同様なことがあったと印象付けようとしているとも。それだけ大臣(蘇我蝦夷)の権力が強かったということだと思われます。

遥遥に…が示す意味
中大兄皇子が、島大臣(蘇我入鹿)の家の近くで、中臣鎌足と密談をしたことを指しているとも言われます。しかし、そもそもは男女の恋の歌とも言われます。
遠方の浅野の雉…の意味
上宮の王…つまり山背大兄王は静かに、蘇我入鹿に殺されたが、今度は中大兄皇子が蘇我入鹿を殺すことを歌ったとも言われます。ただし、そもそもは野原で一夜を過ごした男女の歌とされます。
小林に…の歌の意味
入鹿が殺されることを指し示しているとも言われますが、そもそもは当然ながら、見知らぬ男と結ばれた女の歌。
歌と蘇我氏の関係
ここで歌われた歌は本来は恋の歌です。また蘇我に神の言葉を投げかける神官たちの声があまりに多く、聞こえない状態を見た老人たちは
「時流が変わる!」
と言ったのですから、この記事が指し示すことが蘇我氏のこれからの暗殺というのはちょっと辻褄が合わないのではないかと思うのですよね。
案外、これらの歌を「暗殺の兆し」と見るのは、結末を知っている私たちが穿った見方をしているだけかもしれません。蘇我氏は人望もあって当てにされていた。人が集まり、恋の歌を歌った。その歌が記録として残っていた。それを記事にした。というわけかも。
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