第五段一書(九)殯斂の宮へ

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第五段一書(九)殯斂の宮へ

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原文

一書曰、伊弉諾尊、欲見其妹、乃到殯斂之處。是時、伊弉冉尊、猶如生平、出迎共語。已而謂伊弉諾尊曰「吾夫君尊、請勿視吾矣。」言訖忽然不見、于時闇也。伊弉諾尊、乃舉一片之火而視之、時伊弉冉尊、脹滿太高。上有八色雷公、伊弉諾尊、驚而走還、是時、雷等皆起追來、時道邊有大桃樹、故伊弉諾尊、隱其樹下、因採其實、以擲雷者、雷等皆退走矣、此用桃避鬼之緣也。時伊弉諾尊、乃投其杖曰「自此以還、雷不敢來。」是謂岐神、此本號曰來名戸之祖神焉。所謂八雷者、在首曰大雷、在胸曰火雷、在腹曰土雷、在背曰稚雷、在尻曰黑雷、在手曰山雷、在足上曰野雷、在陰上曰裂雷。
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現代文訳

第五段一書(九)
ある書によると……
イザナギは死んだ妻であるイザナミに会いたいと、遺体を安置する「殯斂(アラキ)の宮」に行きました。

イザナミは生きていた時と同じように訪ねてきたイザナギを出迎え、話し合いました。

「愛する夫、イザナギ
どうか私の姿を見ないでください」
と言い終わると、忽然と見えなくなり、辺りは闇に包まれました。

イザナギは一つ火(ヒトツビ)をつけて照らして見ました。

するとイザナミの体が腐って膨れ、その体の上には八種の雷神が憑いていました。

驚いたイザナギは走り帰りました。
雷神たちは気がついて追いかけてきました。

逃げる途中に桃の木があったのでイザナギは樹に隠れて、桃の実を取って雷神たちに投げつけました。すると雷神たちは逃げてしまいました。
「桃を用いて鬼を避ける」というのはこの為です。

イザナギは杖を投げて
「ここからこっちには雷神は来られない!」
と言いました。
これを岐神(フナトノカミ)と言います。本来の名前は来名戸之祖神 (クナトノオヤカミ)です。

俗に言う「八種の雷神」というのは首にあるのを大雷(オオイカヅチ)、胸にあるのを火雷(ホノイカヅチ)、腹にあるのを土雷(ツチイカヅチ)、背にあるのを稚雷(ワクイカヅチ=ワカイカズチ)、お尻にあるのを黒雷(クロイカヅチ)、手にあるのを山雷(ヤマイカヅチ)、足にあるのを野雷(ノノイカヅチ)、女性器にあるのを裂雷(サクイカヅチ)といいます。
古事記の対応箇所
黄泉の国へ
イザナミは既に…
逃げろ!
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解説

古代の豪族は古墳をつくりました。古墳は一般的には「墓」ですが、同時に宗教施設でもあります。遺体は殯斂(アラキ)の宮に安置され、白骨化するまで放置します。これが「殯(モガリ)」です。白骨化すると古墳に埋葬されます。モガリの時期は随書によると3年とされますが、事情によって期間は変わるようです。
憤死した場合(例えば暗殺された、自殺に追い込まれた)は、モガリの期間が短くなります。これは憎しみのあまり、黄泉から復活し祟ることを恐れ、さっさと土の下に埋めたいという欲求からだと思われます。

イザナミが恥をかかされたこと(見るなと言ったのに見た)で、夫イザナギを憎み、タタリ神の雷神を指し向けるパターンはこの「黄泉の国編」では決まりごとになっています。

これはイザナギという神ですら「死」の世界は恐ろしいものという意味もあります。また、イザナミ同様に出産によって死んだ女性は古代では珍しくなかったでしょう。集落を豊かにする「出産」。それに失敗し死に、その死体が腐り疫病を呼ぶ恐怖。

その穢れを退けるものとして「桃」があり、「杖」による結界があります。桃はどうやら中国の思想の影響ではないか?というのが一般的です。
杖について
杖が結界を作るという考えは鳥居などのように二本の柱とそこを結ぶ線が境目となる考えの元かもしれません。または「第五段一書(六)-3 千人殺し、千五百人生ませる」で杖・帯・衣服・靴が投げられて神となったように、外部からやってきて病気を持ち込む可能性のある「旅人」の象徴だったのかもしれません。
●どちらにしても「杖」は「穢れ」に関わる「モノ」として特別視されたと思います。
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