第十段本文−3貧鉤と呼んでから

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第十段本文−3貧鉤と呼んでから

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現代語訳

第十段本文−3
彦火火出見尊(ヒコホホデミ)は海神(ワダツミ)の娘の豊玉姫(トヨタマヒメ)を娶って、海宮(ワタツミノミヤ)に住んでいました。

三年経ちました。

彦火火出見尊(ヒコホホデミ)は安らかで楽しいとは思っていたのですが、故郷を思う気持ちがありました。それで時折、大きなため息を漏らしていました。それを豊玉姫(トヨタマヒメ)が聞いて、父に言いました。
「天孫(アメミマ=ヒコホホデミ)は困り顔で、しばしばため息をついています。土(クニ)を懐かしんでいるのでしょう」
海神(ワダツミ)はすぐに彦火火出見尊(ヒコホホデミ)を招いて、おもむろに言いました。

「天孫(アメミマ)。もしも故郷(=地上)に帰りたいと思っているのならば、送りましょう」
それで鯛の赤女の口から得た釣り針を彦火火出見尊(ヒコホホデミ)に授けて、教えました。

「この釣り針を、あなたが兄に返すときは、コッソリとこの釣り針を『貧鉤(マヂチ=貧しい釣り針)』と呼んでから、兄に与えなさい」

また潮滿瓊(シオミツタマ・シオミツニ)と潮涸瓊(シオヒノタマ・シオヒルニ)を渡して教えました。
「潮滿瓊(シオミツタマ・シオミツニ)を海の水に漬ければ、潮がたちまち満ちる。これであなたの兄を溺れさせなさい。もし兄が悔い改めて哀れみを乞うたら、潮涸瓊(シオヒノタマ・シオヒルニ)を海の水に漬ければ、潮は自然と引く。これで救いなさい。そうして、攻め悩ませれば、兄はきっと従うでしょう」

それで地上に帰ろうとするときになって、豊玉姫は天孫(アメミマ)に言いました。
「わたしはすでに妊娠しています。もうすぐ生まれるでしょう。わたしは必ず風や波の荒い日に海辺に出ます。お願いです。わたしのために産屋を立てて待っていてください」
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解説

『貧鉤』と呼んで力が無くなるのは言霊の力
マヂチとは「貧しい」「チ」。この「チ」はこの場では「釣り針」を挿しますが、「海の幸」の「サチ」の「チ」と同様に「霊威」を表しています。道具にも霊威があり、その霊威が無くなると、道具の役割を果たせなくなる。その霊威を削ぐ為に「貧しい釣り針」と呼びます。

「貧しい」と呼んだだけで、その霊威が無くなるというのは、言霊信仰があってのこと。
浦島太郎に似てる
このページの前半部分、地上が恋しくなって地上に帰るあたりは浦島太郎に似ています。浦島太郎って実は日本書紀の中で「浦島太郎には一冊、特別に書くよー」と宣言されています。実際にはその本は見つかっていないのですが、浦島太郎が大和にとって特別な神話だったのは間違いなさそうです。
なので、この海神神話が似ているのも、そこいらへんが関係している可能性は高いです。
玉の力
今まで高天原や出雲の神話で見て来た「玉」と、ちょっと性質が違います。言葉は同じでも、今までは装飾品というイメージ、こちらはマジックアイテムです。水に漬けることで効果を発するのですから、海に関わるモノでしょう。

日向神話が出雲や高天原とは性質を異にするのが分かります。
参考:ヒスイ
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個人的コラム

言霊は日向から?
出雲では見かけなかった言霊の要素が日向にあるということは、高天原の源流は九州南部にあったんじゃないか?と邪推。

原文

已而彦火火出見尊、因娶海神女豊玉姫。仍留住海宮、已經三年。彼處雖復安樂、猶有憶鄕之情。故時復太息、豊玉姫聞之、謂其父曰「天孫悽然數歎、蓋懷土之憂乎。」海神乃延彦火火出見尊、從容語曰「天孫若欲還鄕者、吾當奉送。」便授所得釣鉤、因誨之曰「以此鉤與汝兄時、則陰呼此鉤曰貧鉤、然後與之。」復授潮滿瓊及潮涸瓊而誨之曰「漬潮滿瓊者則潮忽滿、以此沒溺汝兄。若兄悔而祈者、還漬潮涸瓊則潮自涸、以此救之。如此逼惱、則汝兄自伏。」及將歸去、豊玉姫謂天孫曰「妾已娠矣、當産不久。妾必以風濤急峻之日、出到海濱。請爲我作産室相待矣。」
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