鳥は夫を慕う

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鳥は夫を慕う

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原文

八千矛の 神の命 ぬえ草の 女にしあれば 我が心 浦渚の鳥ぞ 今こそは 我鳥にあらめ 後は 汝鳥にあらむを 命は な死せたまひそ いしたふや 天馳使 事の 語言も 是をば

現代語訳

ヤチホコ神よ

わたしはなよなよとした女ですから、浦渚の水鳥のように夫を慕っています。

今は我侭な鳥ですが、いずれは私も水鳥のように夫を慕うようになります。

だから、鳥を殺さないでください。

――これを語りごととしてお伝えします。

解説

夜中に夜這いしにやってきたヤチホコ神(オオクニヌシ)に、今はちょっと駄目だけど、いずれあなたのものになるから、勘弁して。という指し当たってのヤンワリとした拒絶を水鳥を絡めて表現した歌です。

女性は今も昔ももったいぶって、自分の価値を高めているという捕らえ方も出来そう。

ところで「鳥」を水鳥としたのは、水鳥がツガイとなってオスとメスが子作りをするところからの想像で、実際に水鳥を指しているかはあやふや。
これらの歌は宮中の歌
前回のヤチホコの歌を含んだいくつかの歌は、宮中での祭礼の中で歌われるものを、挿入したとされます。それに、この歌の成立はかなり新しい――古来から伝わるものではなく、古事記が成立した年代あたりで創作されたとされます。ここいらへんは、細かい表現に時代が反映されるもので、詳細はまた専門書を読んで別途書きたいです。
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