吉備中国の川嶋河の大虬

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仁徳天皇(三十九)吉備中国の川嶋河の大虬

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原文

是歲、於吉備中国川嶋河派、有大虬、令苦人。時路人、觸其處而行、必被其毒、以多死亡。於是、笠臣祖縣守、爲人勇捍而强力、臨派淵、以三全瓠投水曰「汝屢吐毒令苦路人、余殺汝虬。汝沈是瓠則余避之、不能沈者仍斬汝身。」時、水虬化鹿、以引入瓠、瓠不沈、卽舉劒入水斬虬。更求虬之黨類、乃諸虬族、滿淵底之岫穴。悉斬之、河水變血、故號其水曰縣守淵也。當此時、妖氣稍動、叛者一二始起。於是天皇、夙興夜寐、輕賦薄斂、以寛民萌、布德施惠、以振困窮、弔死問疾、以養孤孀。是以、政令流行、天下太平、廿餘年無事矣。

八十七年春正月戊子朔癸卯、天皇崩。冬十月癸未朔己丑、葬于百舌鳥野陵。
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現代語訳

この年(即位67年)。吉備中国(キビノミチノナカノクニ)の川嶋河(カワシマガワ=現在の岡山県浅口郡の河部川・高梁川?)の派(カワマタ=川が分かれているところ)に大虬(ミツチ=大蛇・竜・水の精霊)がいて、人を苦しめていました。そのとき路人(ミチユクヒト)はその場所に触れて行くと、必ずその毒(アシキイキ)を被ってたくさん死んでしまいました。笠臣(カサノオミ)の祖先の県守(アガタモリ)は勇猛で力が強い人でした。派淵(フチ=川の深いところ)を見て、三つの完全な瓢(ヒサゴ=ひょうたん)を川に投げ入れて言いました。
「お前! しばしば毒を吐いて、路人(ミチユクヒト)を苦しめているな! わたしはお前…大虬(ミツチ)を殺す。お前、この瓢(ヒサゴ=ひょうたん)が沈めば、わたしは去ろう。沈めることが出来なければ、すぐにお前の体を斬って殺す」
水虬(ミツチ)は鹿に化けて、瓢(ヒサコ)を引き入れようとしました。しかし瓢は沈みませんでした。すぐに剣を振り上げて、水に入って虬(ミツチ)を斬りました。さらに虬(ミツチ)の党類(トモガラ)を探しました。すると諸々の虬の族(ヤカラ)が淵の底の岫穴(カウヤ=?)に満ちていました。ことごとく斬り殺しました。川の水が血に変わりました。その川を名付けて県守淵(アガタモリノフチ=地名だが未詳)といいます。このときに妖気(ワザワイ)が蠢いて、叛くものが一人、二人と起こり始めました。天皇は夙(ツト=朝早くから)から起き、夜遅くに寝るまで、仕事をして、賦(ミツキ=労働)を軽くして斂(オサメモノ=税金)を薄くして、民萌(オオミタカラ=人民)を緩やかにして、徳を持って、恵(ウツクシビ=愛情)を持って、困窮(クルシクタシナキ)した民を救いました。死を弔い、疾(ヤムモノ)を見舞い、孤孀(ヤモオヤモメ=年を取って配偶者を失った独り身の男と女)を養いました。こうして政令(マツリゴト)を行われ、天下は太平でした。20年あまりが何事もなく過ぎました。

即位87年。春1月16日。天皇は崩御しました。
冬10月7日。百舌鳥野陵(モズノノミサザキ)に葬りました。
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解説

またひょうたんか!
ひょうたんを河に投げ入れて、沈んだら「本物の神」で、沈まなかったら「偽物の神」ということみたいです。そういう神事があったんでしょう。ひょうたんの穴が空いていないものってことは、まず沈むことは考え難い。そういうものを投げれて沈むことは無いでしょう。だから、この「何か問題を起こしている神」は偽物。偽物だから、大丈夫。と、まぁ、そういうことみたいです。

鹿?
河の精霊に「ひょうたんを沈められたら本物の神だと認めてやる!」と言ってら、河の中から「鹿」が出てきた。

鹿?

鹿と河とどういうつながりがあるのか?
わたしは仁徳天皇の時代の「鹿」は「狩猟民族の象徴」だと思っています。つまり、河が分かれているところの淵を陣取って、そこで迷惑を掛けていた「民族」が居た。河が分かれているところってのは、船の交通にとって要所中の要所です。また舞台となった吉備は古代に於いては先進国家だったわけです。貿易は盛んだった。そこの交通の要所を邪魔する集団が居た。それを「毒を吐く大虬」と表現した。これを大和朝廷が派遣した人物が討伐した。実際に大和朝廷が派遣したかどうかは分かりませんよ。大虬退治の神話が吉備にあって仁徳天皇の時代に吸収されただけかもしれません。

鹿に化けたのは、彼らが実際に「狩猟民族」だったから、かもしれませんが、当時は大和朝廷から見ると狩猟民族のイメージが悪かった。だから、悪いやつ=狩猟民族、よって、悪いやつは「鹿」で表現される傾向があったのではないかなぁ、とも思います。
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