廬城部連枳莒喩の娘の幡媛の罪・物部尾輿も土地を献上

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安閑天皇(九)廬城部連枳莒喩の娘の幡媛の罪・物部尾輿も土地を献上

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原文

是月、廬城部連枳莒喩女幡媛、偸取物部大連尾輿瓔珞、獻春日皇后。事至發覺、枳莒喩以女幡媛獻采女丁是春日部采女也、幷獻安藝国過戸廬城部屯倉、以贖女罪。物部大連尾輿、恐事由己、不得自安、乃獻十市部・伊勢国來狹々・登伊來狹々・登伊、二邑名也贄土師部・筑紫国膽狹山部也。

現代語訳

(即位1年)この月(閏12月)、廬城部連枳莒喩(イホキベノムラジキコユ)の娘の幡媛(ハタヒメ)が物部大連尾輿(モノノベノオオムラジオコシ)の瓔珞(クビタマ=珠の首飾り)を盗み取って春日皇后(カスガノキサキ)に献上しました。事の次第が発覚するに至って、枳莒喩(キコユ)は娘の幡媛を采女丁(ウネメノヨホロ=采女は豪族が献上した後宮の女官で采女丁は采女に仕える人)に献上しました。
これが春日部の采女です。

あわせて安芸国の過戸(アマルベ=広島県安芸郡府中町多家神社?)の廬城部屯倉(イホキベノミヤケ=安芸国佐伯郡伊福郷=現在の広島県安佐郡安佐町?)を献上して娘の罪をあがないました。物部大連尾輿は、事件の責任が自分に向くことを怖くて、不安になりました。そこで十市部(トオチベ=大和国十市郡)・伊勢国の来狹々(クササ)・登伊(トイ)の贄土師部(ニエノハジベ=神への食事を入れる食器を作る部民)、筑紫国の肝狹山部(イサヤマベ=現在の大分県下毛郡・福岡県京都郡勝山町北部の部民)を献上しました。
来狹々・登伊は二つの邑の名前です。
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解説

罪とあがない
天皇への罪をあがなうために土地や部民を献上したというケースが多い。これを単純に「罪に対する罰」と捉えればそれでいいのですが、「天皇」に「罪を清める」性質があったのではないか?と思っています。

というのも、幡媛とその父が罪に問われて土地を献上するのはわかるのですよ。でも、窃盗の被害者であるはずの「物部大連尾輿」までもが、土地を献上するのは変なんですよ。「空き巣に入られたら、警察に罰金を取られた」ってことでしょう?
罪の穢れ
日本の「罪の穢れ」という感覚があって、罪の穢れってのは伝播するんです。伝染病のように。だから、加害者の罪が被害者である物部大連尾輿にまで伝播する。これを清めないといけない。だから土地を献上しないといけないという理屈になるんですよ。

それはつまり、天皇というべきか、大和朝廷にというべきか、これらに「宗教的な権威」があった。罪を清めるという性質があった。ということになります。
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