釣り針と呪いの呪文

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釣り針と呪いの呪文

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原文

是に赤海鯽魚の喉を探れば、鉤有りき。即ち取り出でて、洗い清まして、火遠理命に奉りし時に、其の綿津見大神誨へて曰ひけらく、「此の鉤を、其の兄に給はむ時に、言りたまはむ状は、『此の鉤は、淤煩鉤、須須鉤、貧鉤、宇流鉤。』と云ひて、後手に賜へ。

物語・由来

その赤海鯽魚(=鯛)の喉を探すと釣り針がありました。
すぐに取り出し、洗い清めて、火遠理命(ホオリ命)に差し出したとき
綿津見大神(ワダツミ大神)が教えました。
「この釣り針を、兄に返すときに、こう言いなさい。
『コノチハ、
オボチ・ススチ・マヂチ・ウルチ』
そして手を後ろにしてください」
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解説

無事釣り針を発見
3年間も口の中に突き刺さっていたので、汚れていたのでしょう、洗い清めてから、ホオリ命に差し出します。
問題はこの後、ワダツミ神(=海神)は釣り針を返すときに呪文を唱えることで兄を出し抜く方法を伝授するのです。確かに兄は意地悪だったかもしれませんが、兄の言うことも一理あるもの。釣り針を返すのに、のろいを掛けるなんて―――と思いませんか。

さて肝心の呪文は
『コノチハ、オボチ・ススチ・マヂチ・ウルチ』
ちゃんと訳すると
「この釣り針は、
憂鬱になる釣り針
イライラする釣り針
貧しくなる釣り針
おろかに成る釣り針」
という意味です。軽い気持ちで釣り針を受け取れませんね。

手を後ろにして……
これは呪術行為とされますが、手を見せないということが「お前が嫌い」というジェスチャーだったのではないか?とも思われます。
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