陵墓を壊さない二つの理由

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顕宗天皇(十八)陵墓を壊さない二つの理由

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原文

皇太子億計、歔欷不能答、乃諫曰「不可。大泊瀬天皇、正統萬機、臨照天下。華夷欣仰、天皇之身也、吾父先王、雖是天皇之子、邁遇迍邅、不登天位。以此觀之、尊卑惟別、而忍壤陵墓、誰人主以奉天之靈。其不可毀、一也。又天皇與億計、曾不蒙遇白髮天皇厚寵殊恩、豈臨寶位、大泊瀬天皇、白髮天皇之父也。億計聞諸老賢、老賢曰『言無不詶、德無不報、有恩不報、敗俗之深者也。』陛下饗国、德行廣聞於天下、而毀陵、翻見於華裔、億計恐、其不可以莅国子民也。其不可毀、二也。」天皇曰「善哉。」令罷役。

現代語訳

皇太子の奥計(オケ=顕宗天皇の兄で後の仁賢天皇)は嘆いて答えることはできませんでした。すぐに諌めて言いました。
「できません。
大泊瀬天皇(オオハツセノスメラミコト=雄略天皇)は万機(ヨロズノマツリゴト=政治の全て)を正しく統率し、天下を臨み照らしました。華夷(ミヤコヒナ=中央の人間も周辺の異民族も)は喜び仰いだのは天皇の身です。わたしたちの父の先王(ウシノキミ)は履中天皇の皇子といっても迍邅(ナヤマシキ=苦難)があって、天皇位に登ることは出来ませんでした。これをもって見れば、尊卑(タカイヤシキ)の違いはハッキリしているのです。それでも父を偲んで雄略天皇の陵墓を壊してしまえば、誰を人主(キミ)として天の霊を奉じるというのでしょうか。それが陵墓を壊すべきではない理由の一つです。また天皇と億計は、かつて白髪天皇(シラカノスメラミコト=清寧天皇)の厚い寵愛と特別な愛に巡り会ったおかげで、宝や地位を臨めるようになったのです。大泊瀬天皇は白髪天皇の父です。億計は諸々の老賢(トシタカキサカシヒト)に聞きました。老賢は言いました。
『言葉で呪わないなら、呪われない。徳で報いなければ報われない。恩があって報いなければ、人民の心を深く破ったことになる』と。
陛下は国を治めて徳のある行いが広く天下に聞こえています。しかし陵を壊し、それが華裔(ミヤコヒナ=中央の人間や辺境の人間)に見せれば・・・億計が恐れていることは、そういった姿勢で国政にのぞんで民を養うべきではないということ。それが壊すべきではない二つ目の理由です」
天皇は言いました。
「良きかな」
と言って、役(エダチ=国民を使役すること)を止めました。
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解説

理由をまとめると
1雄略天皇は天に選ばれた人物であり、殺された押磐皇子は天に選ばれなかった人物。
2雄略天皇の子の清寧天皇が顕宗天皇と仁賢天皇を取り立てた恩がある。恩に報いるのが立派な徳。よって墓を荒らすべきではない。

理由としては通る話なんですよね。儒教的にも理屈は通る。だけど、実際の中国の儒教では墓は荒らすのです。親を殺した「悪」である「仇」は墓を暴いてでも罰するのが普通なんです。つまり、理屈は儒教的なんですが、結論は「日本風」なんですよ。日本人は墓は暴かない。霊が何をするか分からないからです。祟りってのが一番怖い。
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