移那斯・麻都の異動の請願

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欽明天皇(二十六)移那斯・麻都の異動の請願

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原文

又制任那、障而勿遣。由是、不得同計奏答天皇。故、留己麻奴跪蓋是津守連也、別遣疾使迅如飛烏、奉奏天皇。假使二人(二人者、移那斯與麻都也)在於安羅多行姧佞、任那難建、海西諸国必不獲事。伏請、移此二人還其本處、勅喩日本府與任那而圖建任那。故、臣遣奈率彌麻沙・奈率己連等、副己麻奴跪、上表以聞。於是、詔曰『的臣等(等者、謂吉備弟君臣・河內直等也)往來新羅、非朕心也。曩者、印支彌(未詳)與阿鹵旱岐在時、爲新羅所逼而不得耕種。百濟路迥、不能救急。由的臣等往來新羅、方得耕種、朕所曾聞。若已建任那、移那斯・麻都自然却退。豈足云乎。』伏承此詔、喜懼兼懷。而新羅誑朝、知匪天勅。
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現代語訳

(移那斯・麻都は)任那を専制して障害となって使者を派遣していません。それで一緒になって計画して天皇にその計画を報告することができません。己麻奴跪(コマナコ)…
おそらくは津守連(ツモリノムラジ)です

を留めて、別に疾使(トキツカイ=速い使者)を、まるで飛ぶ鳥のようなのを派遣して、天皇に申し上げました。仮に二人が…
二人とは移那斯・麻都のことです

安羅(アラ=任那の国)に居て、多くの奸計を行えば、任那は再建は難しく、海西(ワタノニシ=朝鮮半島)の諸国は必ず仕えられなくなる。伏して請願いたします。この二人(移那斯・麻都)を移動して、元の国へと帰してください。勅(ミコトノリ)して日本府と任那を説得して、任那の再建を図ってください。わたしめは奈率弥麻沙(ナソチミマサ)・奈率己連(ナソチコレン)などを派遣して、己麻奴跪(コマナコ)を付き添いに添えて、表(フミ)を献上して、伺いました。それで天皇が詔(ミコトノリ)して言いました。
『的臣(イクハノオミ)たちは…
「たち」というのは吉備弟君臣(キビノオトキミノオミ)・河内直(カフチノアタイ)たちのことをいいます。

新羅を往来していることは、朕の意思ではない。昔、印支彌(イキミ=人名)…
印支彌はいまだハッキリしません

と阿鹵旱岐(アロノカンキ)が任那に居たときに、新羅に責められて、耕したり種を蒔くことができなかった。百済は道が遠く、急な事態に救うことはできない。的臣(イクハノオミ)たちが新羅に往来するようになると、それで耕したり種を蒔くことができるようになったという話は朕が昔に聞いた。もし、任那を再建すれば移那斯・麻都は自然と退くだろう。どうして、言う必要があるだろうか』
伏してこの詔(ミコトノリ)を受け賜り、喜びかしこまる心の二つがあった。そうして新羅は朝廷を欺き、天勅(オオミコト)では無いことが分かった。
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解説

誤解
百済は任那の再建を図っているのですが、任那も日本府も一向に言うことを聞か無い。使者を送っても返事が無い。そこで「なんでやねん」と問いただすと、「百済に行くなよ」と大和朝廷に言われたよと、日本府が返事をしたと。百済はそれはおかしいと、大和朝廷に使者を送って、「そこんところどうなの?」と聞いてみると、天皇が「知らないよ」と言って、「あぁ、移那斯・麻都の策略、というか嘘だったのだな」と判明したのがこのページです。

しかし、百済は「任那の再建には移那斯・麻都が邪魔! どっかにやって!」と主張しているのに対して、天皇は「任那を再建すれば移那斯・麻都はどっかに行くでしょ」と言っているので、問題は全然解決していない。

大和朝廷はまず朝鮮半島に興味を失っているか、大和朝廷に「統率力が無い」かどちらかでしょう。
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