第十段一書(一)−4貧窮の本、飢饉の始め、困苦の根

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第十段一書(一)−4貧窮の本、飢饉の始め、困苦の根

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原文

於是、豊玉彦遣人問曰「客是誰者、何以至此。」火火出見尊對曰「吾是天神之孫也。」乃遂言來意、時海神迎拜延入、慇懃奉慰、因以女豊玉姫妻之。故留住海宮、已經三載。是後火火出見尊、數有歎息、豊玉姫問曰「天孫、豈欲還故鄕歟。」對曰「然。」豊玉姫卽白父神曰「在此貴客、意望欲還上国。」海神、於是、總集海魚、覓問其鉤、有一魚、對曰「赤女久有口疾。或云、赤鯛。疑是之呑乎。」故卽召赤女、見其口者、鉤猶在口。便得之、乃以授彦火火出見尊。因教之曰「以鉤與汝兄時、則可詛言『貧窮之本、飢饉之始、困苦之根。』而後與之。又汝兄渉海時、吾必起迅風洪濤、令其沒溺辛苦矣。」於是、乘火火出見尊於大鰐、以送致本鄕。
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現代語訳

第十段一書(一)−4
豊玉彦(トヨタマヒコ=海神)は人を遣わせて尋ねさせました。
「客人。あなたは誰ですが?
どうしてここにいるのですか??」

火火出見尊(ホホデミノミコト)は答えました。
「わたしは天神(アマツカミ)の子孫です」
火火出見尊(ホホデミノミコト)はここに来た経緯を説明しました。海神(ワダツミ)は迎え出て、拝礼して宮殿に招き、丁寧にもてなしました。娘の豊玉姫を妻に召し上げました。それから海宮(ワダツミノミヤ)に住み、三年が経ちました。

火火出見尊(ホホデミノミコト)はしばしば溜め息を漏らす事がありました。豊玉姫(トヨタマヒメ)が尋ねました。
「天孫(アメミマ)はもしかして故郷(モトノクニ)に帰りたいと思っているのですか??」
火火出見尊(ホホデミノミコト)は答えました。
「そうです」
豊玉姫(トヨタマヒメ)はすぐに父の神に報告しました。
「ここに居る高貴な客人は上国(ウハツクニ=地上の国)に帰りたいと思っています」
海神は海の魚の全てを集めて、火火出見尊(ホホデミノミコト)が失くしたという釣り針を探しました。すると一つの魚が居ました。その魚が答えました。
「赤女(アカメ)は長い事、口の病に罹っています。もしかすると赤女(アカメ)が飲んだのかもしれません」
別伝によると赤鯛

すぐに赤女(アカメ)を呼び寄せて口の中を見ると、釣り針はまだ口の中にありました。これを取り出しました。火火出見尊(ホホデミノミコト)に渡し、教えました。
「釣り針を兄に返すときは、呪いを掛けなさい。
『貧窮之本、飢饉之始、困苦之根。』
貧窮(マジ)の本(モト)、飢饉(ウエ)の始め、困苦(クルシミ)の根(モト)

と言ってから、兄に返しなさい。
また兄が海を渡るときにあなたは迅風(ハヤチ)洪濤(オオナミ)を起こして、溺れ苦しませなさい」
それで火火出見尊(ヒコホホデミ)を大きな鰐(ワニ)に似せて、本郷(モトツクニ)に帰しました。
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解説

玉は無い
第十段本文−3貧鉤と呼んでからに登場する潮滿瓊(シオミツタマ・シオミツニ)と潮涸瓊(シオヒノタマ・シオヒルニ)や塩満珠と塩乾珠に出て来る塩満珠(シオミツダマ)と塩乾珠(シオヒダマ)といった、マジックアイテムは無く、ただ「兄が海を行くときは波風を起こして苦しめなさい」と助言します。

これはヒコホホデミは海神のサポートを得た、という意味です。ヒコホホデミには海の神の威光が備わったことで、天津神(天神)と国津神(地祇)に海神の血統が交わった事になり、皇統はこの世界の支配者として相応しいものになります。
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