韋那部真根は采女の相撲に気を取られ、刃を傷つけた

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雄略天皇(四十五)韋那部真根は采女の相撲に気を取られ、刃を傷つけた

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現代語訳

(即位13年)秋9月。木工(コダクミ=木工職人)の韋那部真根(イナベノマネ)は石を質(アテ=木を削る台)にして、手斧で材木を削ります。終日(ヒネモス)削っても誤って刃を傷つけることはありませんでした。天皇は其の場所(=作業場のこと)へと遊びに行って、不思議に思って問いました。
「常に石に誤って、あてることは無いのか?」
真根は答えて言いました。
「決して誤りません」
采女(ウネメ)を呼び集めて、衣裙(キヌモ=裙はスカートとか裾の意味)を脱がせ、著犢鼻(タフサギ=犢鼻は子牛の鼻でふんどしのこと)にして、よく見えるところで相撲を取らせました。すると真根はしばし、作業を停めて、(相撲を)見て削りました。意図せず、手を誤って、刃を傷つけてしまいました。天皇はそれを責譲(セ)めて言いました。
「どこの誰だ!
朕(ワレ)を畏れず、貞(タダ)しくない心を用いて、妄(ミダリガワ)しく、軽々しく答えやがった!」
それで物部に(真根の身柄を)預けて、野原で処刑することにしました。そこで同伴巧者(アイタクミ=仲間の工人のこと)が居て、真根のことを嘆き惜しみ、歌を歌いました。
惜(アタラ)しき 韋那部(イナベ)の匠(タクミ) 架けし墨縄(スミナワ) 其(シ)が無けば 誰(タレ)か架むよ あたら墨縄(スミナワ)
歌の訳惜しいことだ。韋那部の工匠が掛けた墨縄は。それが無ければ、誰に架けられるだろうか! 惜しいことよ、墨縄!

墨縄は大工道具で、直線を引く道具。墨つぼから出た縄が墨縄で、墨縄には墨がついていて、縄を弾くことで直線をつける。この線をつけることを「墨掛け」といいます。歌では「墨を掛ける」と「橋を架ける」を引っ掛けて、工匠の死によって社会的な損失が大きいと訴えている、と思います。

天皇はこの歌を聴いて、反省し、悔い惜しむ気持ちが出て、喟然(ナゲ)いて頽歎(ナゲ)いて、言いました。
「優秀な人を失うところだった!」
それで赦(ユル)す使者を送って甲斐(カイ=甲斐は良馬の産地で皇室が愛用していた)の黒駒(クロコマ=黒毛の馬)に乗って、馳せて処刑所に詣でて、止めて赦しました。それで徽纒(ユワイヅナ=話の流れから真根を縛っていた縄かと)を解きました。また歌を歌いました。
ぬばたまの 甲斐の黒駒(クロコマ) 鞍(クラ)着せば 命死なまし 甲斐の黒駒
歌の訳(「ぬばたまの」は黒の枕詞)甲斐の黒い馬に鞍を付けていたら、(鞍の重みの分だけ到着が遅れて)命は無かっただろうなぁ、甲斐の黒駒よ!

ある本によると「命死まなし」に換えて「い及かずあらまし」といいます。
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解説

しょっちゅう人を殺すなぁ。雄略天皇は怖い。
その一方でもこのページでも工匠の素晴らしさを讃える内容になっています。日本人は職人を重んじていたのでしょう。
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原文

秋九月、木工韋那部眞根、以石爲質、揮斧斲材、終日斲之、不誤傷刃。天皇、遊詣其所而怪問曰「恆不誤中石耶。」眞根答曰「竟不誤矣。」乃喚集采女、使脱衣裙而著犢鼻、露所相撲。於是眞根、暫停、仰視而斲、不覺手誤傷刃。天皇因嘖讓曰「何處奴。不畏朕、用不貞心、妄輙輕答。」仍付物部、使刑於野。爰有同伴巧者、歎惜眞根而作歌曰、
婀拕羅斯枳 偉儺謎能陀倶彌 柯該志須彌儺皤 旨我那稽麼 拕例柯々該武預 婀拕羅須彌儺皤

天皇聞是歌、反生悔惜、喟然頽歎曰「幾失人哉。」乃以赦使、乘於甲斐黑駒、馳詣刑所、止而赦之。用解徽纒、復作歌曰、

農播拕磨能 柯彼能矩盧古磨 矩羅枳制播 伊能致志儺磨志 柯彼能倶盧古磨
一本「換伊能致志儺磨志、而云伊志歌孺阿羅麻志也。」
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