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雄略天皇(四十七)根使主の玉縵と罪の露呈
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夏四月甲午朔、天皇欲設吳人、歷問群臣曰「其共食者、誰好乎。」群臣僉曰「根使主可。」天皇、卽命根使主爲共食者、遂於石上高拔原、饗吳人。時、密遣舍人、視察裝飾、舍人復命曰「根使主所著玉縵、大貴最好。又衆人云、前迎使時又亦著之。」於是、天皇欲自見、命臣連裝如饗之時、引見殿前。皇后、仰天歔欷、啼泣傷哀。天皇問曰「何由泣耶。」皇后避床而對曰「此玉縵者、昔妾兄大草香皇子、奉穴穗天皇勅、進妾於陛下時、爲妾所獻之物也。故、致疑於根使主、不覺涕垂哀泣矣。」
現代語訳
(即位14年)夏4月1日。天皇は呉人に食事を振る舞おうと思い、群臣に次々に問いました。
「共に食事をする人は誰がよいか?」
群臣たちはことごとく言いました。
「根使主(ネノオミ)がよいでしょう」
天皇はすぐに根使主(ネノオミ)に命じて共食者(アイタゲヒト)としました。石上(イソノカミ)の高抜原(タカヌキノハラ)で呉人と食事をさせました。そのときに密かに舎人を派遣して、装飾を視察させました。舎人は報告して言いました。
「根使主が身につけた玉縵(タマカズラ)は太くて高貴で、とても好ましいものです。衆人(モロビト=周囲の人たち)も言いました。
『前に使者を迎えたときにもまた、身につけていた』と」
それで天皇は見たいと思って、臣連に命じて、食事をしたときのような装いで、殿(オオトノ=天皇の宮殿)の前へと呼び寄せました。すると皇后(=草香幡梭姫皇女)が天を仰ぎ見て嘆き、泣き悲しみました。天皇は問いました。
「どういう理由があって泣いているのだ?」
皇后は床を降りて(天皇・皇后は一段高い床にいる)、答えました。
「この玉縵(タマカズラ)は、昔、わたしめの兄の大草香皇子(オオクサカノミコ)が穴穂天皇(アナホノスメラミコト=安康天皇)の勅命を受けて、わたしめを陛下(=ここでは雄略天皇)に送るときに、わたしのために献上した結納品なのです。それで根使主を疑って、不覚にも涙を流してしまいました」
「共に食事をする人は誰がよいか?」
群臣たちはことごとく言いました。
「根使主(ネノオミ)がよいでしょう」
天皇はすぐに根使主(ネノオミ)に命じて共食者(アイタゲヒト)としました。石上(イソノカミ)の高抜原(タカヌキノハラ)で呉人と食事をさせました。そのときに密かに舎人を派遣して、装飾を視察させました。舎人は報告して言いました。
「根使主が身につけた玉縵(タマカズラ)は太くて高貴で、とても好ましいものです。衆人(モロビト=周囲の人たち)も言いました。
『前に使者を迎えたときにもまた、身につけていた』と」
それで天皇は見たいと思って、臣連に命じて、食事をしたときのような装いで、殿(オオトノ=天皇の宮殿)の前へと呼び寄せました。すると皇后(=草香幡梭姫皇女)が天を仰ぎ見て嘆き、泣き悲しみました。天皇は問いました。
「どういう理由があって泣いているのだ?」
皇后は床を降りて(天皇・皇后は一段高い床にいる)、答えました。
「この玉縵(タマカズラ)は、昔、わたしめの兄の大草香皇子(オオクサカノミコ)が穴穂天皇(アナホノスメラミコト=安康天皇)の勅命を受けて、わたしめを陛下(=ここでは雄略天皇)に送るときに、わたしのために献上した結納品なのです。それで根使主を疑って、不覚にも涙を流してしまいました」
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解説
大草香皇子
大草香皇子は母が日向髪長媛で父が仁徳天皇。この妹である草香幡梭姫皇女を安康天皇の時代に「雄略天皇と結婚」させようとしました。大草香皇子は妹を嫁がせることに同意し、押木珠縵という「アクセサリー」と結納品として献上することにしました。ところが、この押木珠縵があまりに美しかったので、大草香皇子との交渉役をしていた根使主が「横取り」して、「大草香皇子は断った」と嘘を報告したために、安康天皇に殺された…という経緯があったんです。
大草香皇子は母が日向髪長媛で父が仁徳天皇。この妹である草香幡梭姫皇女を安康天皇の時代に「雄略天皇と結婚」させようとしました。大草香皇子は妹を嫁がせることに同意し、押木珠縵という「アクセサリー」と結納品として献上することにしました。ところが、この押木珠縵があまりに美しかったので、大草香皇子との交渉役をしていた根使主が「横取り」して、「大草香皇子は断った」と嘘を報告したために、安康天皇に殺された…という経緯があったんです。
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- Page44 雄略天皇(四十四)御井隈の文石小麻呂を春日小野臣大樹が退治する
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- Page46 雄略天皇(四十六)漢織・吳織と衣縫の兄媛・弟媛は住吉津に泊まる
- Page47 雄略天皇(四十七)根使主の玉縵と罪の露呈
- Page48 雄略天皇(四十八)根使主の子孫を皇后と茅渟県主と難波吉士日香々に与える
- Page49 雄略天皇(四十九)秦造が禹豆麻佐となった理由
- Page50 雄略天皇(五十)秦の民を桑栽培のために散らす
- Page51 雄略天皇(五十一)朝夕の御膳を盛る清器と土師連の祖先の吾笥
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