天智天皇(四十)百済の遺臣に冠位を・橘は己が枝々…

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天智天皇(四十)百済の遺臣に冠位を・橘は己が枝々…

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原文

是月、以大錦下授佐平余自信・沙宅紹明(法官大輔)、以小錦下授鬼室集斯(學職頭)、以大山下授達率谷那晉首(閑兵法)・木素貴子(閑兵法)・憶禮福留(閑兵法)・答㶱春初(閑兵法)・㶱日比子贊波羅金羅金須(解藥)・鬼室集信(解藥)、以上小山上授達率德頂上(解藥)・吉大尚(解藥)・許率母(明五經)・角福牟(閑於陰陽)、以小山下授餘達率等五十餘人。童謠云、

多致播那播 於能我曳多曳多 那例々騰母 陀麻爾農矩騰岐 於野兒弘儞農倶

現代語訳

この月(即位10年1月)に大錦下(ダイキンゲ)を佐平の余自信(ヨジシン)・沙宅紹明(サタクジョウミョウ)…
法官大輔(ノリノツカサノオオキスケ)です。

に授けました。
小錦下(ショウキンゲ)を鬼室集斯(キシツシュウシ)…
学識頭(フミノツカサノカミ)です。

に授けました。
大山下(ダイセンゲ)を達率(ダチソチ)の谷那晋首(コクナシンシュ)…
兵法を習っていました。

木素貴子(モクスキシ)…
兵法を習っていました。

憶礼福留(オクライフクル)…
兵法を習っていました。

答㶱春初(トウホンシュンソ)…
兵法を習っていました。

㶱日比子贊波羅金羅金須(ホンニチヒシサンハラコムラコムス)…
薬を理解していました。

鬼室集信(キシツシュウシン)…
薬を理解していました。

に授けました。
小山上(ショウサンジョウ)を達率の徳頂上(トクチョウジョウ)…
薬を理解していました。

吉大尚(キチダイジョウ)…
薬を理解していました。

許率母(コソチモ)…
五経(ゴキョウ=儒教の本のこと)に明るかった。

角福牟(ロクフクム)…
陰陽を習っていました。

小山下(ショウセンゲ)を残りの達率(ダチソチ)たちに50人余りに授けました。童謡で言いました。
橘(タチバナ)は 己(オノ)が枝枝(エダエダ) 生(ナ)れれども 玉に貫(ヌ)く時 同じ緒(オ)に貫(ヌ)く
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解説

大錦下は冠位26階中の第9位。大山下は15位。まぁ、そんなもんだよね。むしろ、低いか? という程度の順位ですが、それはともかく、百済の氏族はこうして日本の制度に吸収されたってことになります。日本としても「知識・文化」は欲しい、百済の氏族は、もはや百済は滅亡しているのだから、行くところがない。だからお互いにウィンウィンって訳です。
童謡の意味
橘は柑橘系植物で、まぁ、ミカンが枝の違うところに成っても、袋に入れる時は同じところに入れるよね、程度のことですが、この童謡が意味するところは「百済と日本は同じ枝」という感覚が当時の日本にあったということです。これが「もともとは同じ血統の2者」という意味なのか、「とっても仲の良い2者」程度の意味なのかはなんとも言えないですね。
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