ヤマトタケルの女装は古代の慣習・大和朝廷の中央集権戦略

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ヤマトタケルの女装は古代の慣習・大和朝廷の中央集権戦略

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概要

まとめ
ヤマトタケルの女装は昭和30年代まであった「男の子は病気に弱いから女の子の格好で育てる」という風習の原型ではないか。
●クマソタケル退治は酒・剣・改名を通じて「大人の男になる」という成人儀礼。
●日本と中朝の国家のシステムが違う。
●中朝は土地と民が王のものだが、日本にはそういう感覚がなかった。
●日本は神の儀式を行うことで自治体の参加料を集めた。これが税の根本。
●大和朝廷はそれらの自治体の集合体。
●古事記・日本書紀はコレらの神話・神事をつなぐことで税を大和朝廷が集める根拠にした。記紀は中央集権国家のための本。
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物語・由来

古事記オウス命は倭比売命から援助を受ける
日本書紀景行天皇(二十五)川上梟師の宴会と暗殺
オウスノミコは叔母であるヤマトヒメから女性の衣装を借り、女装してクマソタケルの宴会へと潜り込み、宴会が終わると、クマソタケルを殺害します。そこでクマソタケルから名前を送られ「ヤマトタケル」に改名します。

よくこの物語から「ヤマトタケルは日本初の女装キャラ」「ヤマトタケルは男の娘」と言われることがあるんですが、まぁ、そういうことではないでしょう。

全て成人儀礼

私はすべて「儀礼」だと思っています。
オウスは女の子の格好をしていますよね。これは昭和30年代まで日本の風習で残っていました。男の子と女の子ならば女の子の方が病気の耐性があります。日本では昔から病気は「魔」の仕業とされていましたから、女の子の格好をさせて、女の子として育てることで、「魔」から…つまり病気から男の子を守るという慣習がありました。おそらく「オウスの女装」はそれの原型じゃないかと思うのです。

そして宴会に参加して、お酒を飲み、剣を取り、新しい名前を得た。酒も剣も「大人」の象徴です。そして新しい名前も「新しい、男としての名前」です。そうしてオウスはヤマトタケルという「大人の男」となっていった。これがオウスの女装とヤマトタケルの熊襲退治の物語の本質ではないか?と思っています。
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日本と中朝の国家の違い

中国や朝鮮では土地も人民も「王・皇帝」の「所有物」です。だから税金を取っても構わないわけです。ところが日本では公地公民が発布されるまでは、土地と人民は天皇のものではありませんし、公地公民が発布されても、そういう意識が民にあったとも思えません。日本と中朝では「国の定義」「国の運営システム」が違うんです。
では、日本ではどうやって税を取っていたのか?ってことになります。
私はそれが「神」の「儀式」だったのだろうと考えています。

大和朝廷と日本人と神の儀式

例えばです。
日本人は山や海の向こうに異界があり、そこから穀物神がやってきて田畑に宿り、作物が実ると思っていました。そこで神社というか神官が「神を寄せる儀式」をするのです。変な話ですが、儀式をしないと作物は実らないというのが世間の認識になります。となると、作物の中から何割か納めるようになるのです。まぁ、この時点では「税」というよりは「参加料」なんです。地方の自治体に民が参加し、運営をしていくというのは、民に取っても悪いことじゃありません。それに、今、私は「神の儀式」と言いましたが、平たく言えば「祭り」です。祭りは儀式ではありますが、同時に…というよりは主題は「娯楽」です。娯楽だから参加したいし、そこに多少の参加料を払ってもいい。それが日本の「自治体の原型」だったのでしょう。
春の田植え前と収穫時の秋に祭りを行う、それが参加料を払う根拠になっていて、自治体を運営する資金になった。「政」を「マツリゴト」と読むのは、そういうことです。
大和朝廷
それが徐々に大きくなり「大和朝廷」という枠組みが出来ていった。そこに至っても、この「原型」が国の基本だったのだと思います。大和朝廷は地方の氏族が参加して運営する組織だった。共和国と言えるかもしれませんが、正確には寄り合い政府って感じでしょうね。その中心が天皇だった。天皇は明らかに「宗教的」な存在です。
大和朝廷と神の儀式
となると神の儀式は大事なものです。
神の儀式が国を支えているという認識がほとんどの人にあった。
税を徴収できるのは神がいて、そこの儀式を大和朝廷とそこに参加する氏族が握っているからです。この全ての「神の儀式」を古事記や日本書記で「数珠繋ぎ」にしようとした。全ての儀式をつないでしまえば、全ての神の儀式は大和朝廷が税を聴取する根拠となる。私は古事記と日本書紀は「中央集権国家」の根拠となる「神話」だった。のだと思います。
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税と国のシステム

オウスの女装の話に戻しましょう。
幼いオウスを女装させることで「税金」を取っていたのではないか?と思います。女装の衣装は伊勢神宮の斎宮だったヤマトヒメから渡されたわけです。伊勢の神の霊威を受けた衣装の方が病気を避けるに相応しいでしょう。ここでまず徴収。毎度ありって感じです。

その衣装を脱ぎ、剣を取り、酒を飲み、男の名前に改名する、そういう「成人の儀式」があり、そこでも税を徴収した。税というか神への奉納ですが。おそらく剣・酒・改名は伊勢の儀式ではなく、熊襲の儀式だったんじゃないでしょうか。熊襲の儀式を物語に取り入れるということは、熊襲で行われた成人儀礼で発生した神への報酬(奉納)も、大和朝廷にいくらか納められるべきものとなります。
そういう国家の税のシステムを統合しようとしたのが古事記と日本書紀だったのではないか?と思っています。
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