スポンサードリンク
高行くや 速總別の 御襲料
TWEET Facebook はてブ Google+ Pocket読み下し文
爾くして、天皇、直(ただ)に女鳥の王の坐す所に幸(いでま)して、其の殿戸の閾(しきみ)の上に坐しき。 ここに、女鳥の王、機(はた)に坐して服(はた)を織りき。 爾くして、天皇、歌いて曰く、
賣杼理能 和賀意富岐美能 淤呂須波多 他賀多泥呂迦母
女鳥の王、答えて歌いて曰く、
多迦由久夜 波夜夫佐和氣能 美淤須比賀泥
故、天皇、其の情を知りて宮に還り入りき。 此の時に其の夫速總別の王到り來る時に、其の妻女鳥の王、歌いて曰く、
比婆理波 阿米邇迦氣流 多迦由玖夜 波夜夫佐和氣 佐邪岐登良佐泥
天皇、此の歌を聞きて、即ち軍を興し殺さんと欲いき。
賣杼理能 和賀意富岐美能 淤呂須波多 他賀多泥呂迦母
女鳥の王、答えて歌いて曰く、
多迦由久夜 波夜夫佐和氣能 美淤須比賀泥
故、天皇、其の情を知りて宮に還り入りき。 此の時に其の夫速總別の王到り來る時に、其の妻女鳥の王、歌いて曰く、
比婆理波 阿米邇迦氣流 多迦由玖夜 波夜夫佐和氣 佐邪岐登良佐泥
天皇、此の歌を聞きて、即ち軍を興し殺さんと欲いき。
スポンサードリンク
現代語訳
天皇は直接に女鳥王(メドリノキミ)の居るところに行き、その宮殿の戸の閾(シキミ=敷居)の上に居ました。それで女鳥王(メドリノキミ)は機織り機の前に座って服を追っていました。それで天皇は歌いました。
女鳥の 我が大君の 織ろす機 誰が料ろかも
女鳥王は答えて歌いました。
高行くや 速總別の 御襲料
天皇はその歌を聴いて女鳥王の心情を知って自分の宮殿に帰りました。夫の速総別王(ハヤブサワケノミコ)が到着するときに妻の女鳥王が歌いました。
雲雀は 天に翔る 高行くや 速總別 鷦鷯獲らさね
天皇はこの歌を聴いて、すぐに軍を起こして二人を殺そうと思いました。
女鳥の 我が大君の 織ろす機 誰が料ろかも
歌の訳女鳥の私の大君(=ここでは女鳥王のこと)が織っている服はだれのものですか
女鳥王は答えて歌いました。
高行くや 速總別の 御襲料
歌の訳(「高行くや」はハヤブサの枕詞)あの速総別(ハヤブサワケ)の着物です。
天皇はその歌を聴いて女鳥王の心情を知って自分の宮殿に帰りました。夫の速総別王(ハヤブサワケノミコ)が到着するときに妻の女鳥王が歌いました。
雲雀は 天に翔る 高行くや 速總別 鷦鷯獲らさね
歌の訳雲雀は天を駆けるものです。同様に高く天を行くハヤブサの名を持った速総別(ハヤブサワケ)よ。鷦鷯(サザキ=ミソサザイ=鳥の名前=仁徳天皇の名前)を獲って殺してしまいなさい。
天皇はこの歌を聴いて、すぐに軍を起こして二人を殺そうと思いました。
スポンサードリンク
解説
単にフられた腹いせにしか見えないが
歌はこの物語にあたって作られたのではなくて、元々「歌謡」としてあったものを当てはめたか、神楽というかオペラというかそういう演し物があって、それを古事記に取り込んだか。ともかくそういう経緯があって古事記に描かれているので史実かというと、それはどうもよく分からない。
その中で、この物語の登場人物が、「女鳥王」「速総別」「大鷦鷯」と鳥の名前でまとめられているのを見ると、仁徳天皇の「大鷦鷯」という名前は、この物語がまずあって付けられたと考えたほうが自然。それで仁徳天皇は実在しない、という説もあります。まぁ、それで非実在と考えるのはちょっと飛躍かな?と思うのです。
それはともかく。
鳥の名前というと、出雲神話の中の「アメノワカヒコの葬式」などを思い出します。そうでなくても出雲神話は鳥が頻出します。出雲から大和へと物語の中心が動いても、神武天皇を導いた八咫烏(ヤタガラス)、ヤマトタケルの化身である白鳥、と「鳥の神話」という血脈は出雲から大和へと受け継がれていき、ここで「女鳥」「ハヤブサ」「鷦鷯」の鳥の物語があることを考えると出雲とは「国譲りを迫られた負け犬」ではなく、大和の「前身」というか、文化の土台ではないかな?と思うのですね。
ただ鳥なんて日本じゅうに居るわけでそれを神聖視することが偶然重なったからといって驚くことは無いわけで、鳥の神話でつながっているからといって関係性が強いと言い張る気は全然ありませんよ。
歌はこの物語にあたって作られたのではなくて、元々「歌謡」としてあったものを当てはめたか、神楽というかオペラというかそういう演し物があって、それを古事記に取り込んだか。ともかくそういう経緯があって古事記に描かれているので史実かというと、それはどうもよく分からない。
その中で、この物語の登場人物が、「女鳥王」「速総別」「大鷦鷯」と鳥の名前でまとめられているのを見ると、仁徳天皇の「大鷦鷯」という名前は、この物語がまずあって付けられたと考えたほうが自然。それで仁徳天皇は実在しない、という説もあります。まぁ、それで非実在と考えるのはちょっと飛躍かな?と思うのです。
それはともかく。
鳥の名前というと、出雲神話の中の「アメノワカヒコの葬式」などを思い出します。そうでなくても出雲神話は鳥が頻出します。出雲から大和へと物語の中心が動いても、神武天皇を導いた八咫烏(ヤタガラス)、ヤマトタケルの化身である白鳥、と「鳥の神話」という血脈は出雲から大和へと受け継がれていき、ここで「女鳥」「ハヤブサ」「鷦鷯」の鳥の物語があることを考えると出雲とは「国譲りを迫られた負け犬」ではなく、大和の「前身」というか、文化の土台ではないかな?と思うのですね。
ただ鳥なんて日本じゅうに居るわけでそれを神聖視することが偶然重なったからといって驚くことは無いわけで、鳥の神話でつながっているからといって関係性が強いと言い張る気は全然ありませんよ。
スポンサードリンク
SNSボタン
TWEET Facebook はてブ Google+ Pocketページ一覧
仁徳天皇(古事記)の表紙へ
- Page9 山代の筒木の宮に物申す我が兄の君は涙ぐましも
- Page10 這う虫・殻・飛ぶ鳥の三色に変わる三種の虫
- Page11 八田の 一本菅は 子持たず
- Page12 女鳥王は嫉妬が不安
- Page13 高行くや 速總別の 御襲料
- Page14 梯立ての 倉椅山を 嶮しみと
- Page15 大楯連の妻の玉釧
- Page16 そらみつ 倭の国に 雁産むと 未だ聞かず
- Page17 枯野の 塩に焼き 其が余り 琴に作り
スポンサードリンク