アメノワカヒコの死

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アメノワカヒコの死

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原文

是に高木神、「此の矢は、天若日子に賜へりし矢ぞ。」と告りたまひて、即ち諸の神等に示せて詔りたまひけらく、「或し天若日子、命を誤たず、悪しき神を射つる矢の至りしならば、天若日子に中らざれ。或し邪き心有らば、天若日子此の矢に麻賀礼。」と云ひて、其の矢を取りて、其の矢の穴より衝き返し下したまへば、天若日子が朝床に寝し高胸坂に中りて死にき。亦其の雉還らざりき。故今に諺に、「雉の頓使」と曰ふ本是なり。

現代語訳

高木神(タカギ神)は
「この矢は、天若日子(アメノワカヒコ)に与えた矢だ」
と言いました。
そしてすぐに諸々の神に見せて言いました。
「もし天若日子(アメノワカヒコ)が使命に背かずに誤らず、悪い神を射った矢がここに来たのならば、天若日子(アメノワカヒコ)に当たらない。もし天若日子(アメノワカヒコ)が邪(ヨコシマ)な心を持っているならば、天若日子(アメノワカヒコ)に矢が当たって死ぬ」
と言って、その矢を取って、矢が飛んできた穴から突き返しました。
すると天若日子(アメノワカヒコ)が朝、寝ている床に飛んでいって、胸に当たって死んでしまいました。

また使いとして送った雉(キジ)は帰ってきませんでした。
それで今でも諺に「雉(キジ)のひた使」というのがありますが、その起源はこの話からです。
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解説

アメノワカヒコの死
オオクニヌシの娘シタテルヒメと結ばれた美青年のアメノワカヒコが返し矢で死亡。高天原から見れば裏切り者。しかし、物語上アメノワカヒコは悲劇の二枚目といったところ。

前のページで初登場というべきか、タカミムスビの別名とされるタカギ神が、造化三神の分際(!)で、普通の神様というか、人間のようにきびきびと動いて物語をすすめます。
これが、どーも気に入らない。
というのもタカミムスビは独り神(妻も子も居ない)であるだけでなく「天地開闢と造化三神の登場」で書かれているように「身を隠している」はずなのです。つまり「姿かたちが無い神」です。これまでの、急に子供が出てきたり、高天原でシャシャリ出てくるだけならまだいいのですが、ついには主体的に行動する始末。
うーん。設定があやふやだなぁ……。
個人的にはタカミムスビとタカギ神は同系列(つまり同じ氏族・家系)であっても、「別人(別神)」と考えた方がよいと思います。

キジのひた使い?
初めて聞く諺に対して「今でも諺にある…」なんて言われると、「はぁ…あぁ、そうなんですか」となってしまいます。調べてみると、「送った使いが帰ってこないこと」という意味だそうです。へぇ。これ、日常で使う場面あるかなぁ。
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