黄牛が白い石に

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垂仁天皇(四)黄牛が白い石に

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原文

一云、初都怒我阿羅斯等、有国之時、黃牛負田器、將往田舍。黃牛忽失、則尋迹覓之、跡留一郡家中、時有一老夫曰「汝所求牛者、於此郡家中。然郡公等曰『由牛所負物而推之、必設殺食。若其主覓至、則以物償耳』卽殺食也。若問牛直欲得何物、莫望財物。便欲得郡內祭神云爾。」俄而郡公等到之曰「牛直欲得何物。」對如老父之教。其所祭神、是白石也、乃以白石授牛直。因以將來置于寢中、其神石化美麗童女。於是、阿羅斯等大歡之欲合、然阿羅斯等去他處之間、童女忽失也。阿羅斯等大驚之、問己婦曰「童女何處去矣。」對曰「向東方。」則尋追求、遂遠浮海以入日本国。所求童女者、詣于難波、爲比賣語曾社神、且至豊国々前郡、復爲比賣語曾社神。並二處見祭焉。
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現代語訳

ある書によると…

最初に都怒我阿羅斯等(ツヌガアラシト)が国(任那のこと)に居たときに、黄牛(アメウジ=アメ色の牛)に農具を負わせて、田舎を行っていました。すると黄牛がいなくなりました。すぐに足跡を追って探しました。足跡はある郡家(ムチ=役所)の中に続いていました。そのとき、一人の老人が居て言いました。
「お前が求める牛はこの郡家の中に入った。
郡公(ムラツカサ=役人)たちが言っていた。
『牛が背負っている農具から推測するに、殺して食べてしまってもいいだろう。もしも、牛の持ち主が返せといってきたら、物で弁償すればいい』と。
それで牛を殺して食べてしまった。
もし役人に『牛の代わりに何が欲しいか?』と聞かれたら、財宝を望まず、『代わりに郡内(ムラ)で祀る神を得たいと思う』と言いなさい」
しばらくして郡公(=役人)が来て言いました。
「牛の代わりに何が欲しいか?」
老人が言う通りに答えました。その村の祀る神は「白い石」でした。白い石で牛の代わりに当てました。
それで白い石を寝室に置いておきました。するとその白い石は美麗な童女(オトメ)になりました。阿羅斯等(アラシト)はとても喜んで、交わおうとしました。阿羅斯等が近寄ると童女は消えてしまいました。阿羅斯等は驚き、童女に問いました。
「童女(オトメ)、どこにいった?」
答えて言いました。
「東の方に行きました」
すぐに阿羅斯等は追いかけて、ついには海を越えて、日本国に入りました。求めた童女は難波(ナニワ)に居て、比賣語曾社(ヒメゴソノヤシロ)の神となりました。または豊国々前郡(トヨクニノミチノクチノクニ)で比賣語曾社(ヒメゴソノヤシロ)の神となりました。二箇所で祀られたといいいます。
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解説

黄牛
黄色い牛ってのは何かと言うと、中国では「黄色」は土の色。黄泉の「黄色」と同じ意味です。つまり「土属性の牛」で、「生贄」という意味があったのかもしれない。
古事記のアメノヒボコ日本書紀のツヌガアラシトは同一とされます。アメノヒボコの物語にも「牛」が登場し、食べる食べないというやりとりがあります。古代の日本人には『朝鮮人は獣を食べる』というイメージが強かったのかもしれません。

白い石から女性が生まれる
その結果得られる「白い石」が女性となり、その女性を追いかけて日本にやってくる。神話くさいですね。史実ではなく、日本人が考える「海の向こうから神が来る」という「海洋来訪神」に「朝鮮」を絡めているだけ、なんじゃないかと思われます。
海洋来訪神
例えば、出雲神話では海の向こうから「大物主」がやって来たり、「スクナヒコナ」がやって来ました。ヤマトの場合だと海の向こう、つまり「日向」から神武天皇がやって来ました。神功皇后が朝鮮を征伐して帰ってきたときも似たニュアンスがありました。

このツヌガアラシトが朝鮮から来た、というのは、崇神天皇が四道将軍を派遣して領土を広げた結果、「ツヌガ」が領地となり、その「ツヌガ」にとって「海の向こう」は「朝鮮」ということになった…という可能性もあります。

神功皇后のこととなると「創作」と言われることが多いのに、ツヌガアラシトや天日槍(アメノヒボコ)となると、急に「史実の反映じゃないか?」となるのは、結局、皇国史観の反動です。第二次大戦での罪悪感から客観的に見る目を失っているんです。

この物語を客観的に見ると、まず「ツヌガアラシト」が「王子じゃない」です。王子が牛に農具を乗せて田舎をいって、あげく牛を取られて食べられるなんてこと、仮にあっても書き残さないでしょう。この物語自体は、ツヌガアラシトとは無関係に朝鮮の神話だったのでしょう。
出産に石が関わる話は「朝鮮的」とも言われます。神功皇后応神天皇出産、アメノヒボコのアカルヒメの出生など。ただ、石を神聖視するのは『日本人的』です。よって『石』が関わっているから『朝鮮』というのも実際は疑問。朝鮮の史書の三国史記などによると朝鮮の神話は『石』ではなく『卵』から神や人が生まれる『卵生神話』です。
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