スポンサードリンク
第十段一書(三)−4八尋のおおきな鰐
TWEET Facebook はてブ Google+ Pocket原文
先是、豊玉姫謂天孫曰「妾已有娠也。天孫之胤豈可産於海中乎、故當産時必就君處。如爲我造屋於海邊以相待者、是所望也。」故彦火火出見尊、已還鄕、卽以鸕鷀之羽、葺爲産屋。屋蓋未及合、豊玉姫自馭大龜、將女弟玉依姫、光海來到。時孕月已滿、産期方急、由此、不待葺合、俓入居焉、已而從容謂天孫曰「妾方産、請勿臨之。」天孫心怪其言竊覘之、則化爲八尋大鰐。而知天孫視其私屏、深懷慙恨。既兒生之後、天孫就而問曰「兒名何稱者當可乎。」對曰「宜號彦波瀲武鸕鷀草葺不合尊。」言訖乃渉海俓去。
現代語訳
第十段一書(三)−4
これ(弟が兄を従えた件)より先のことです。
豊玉姫(トヨタマヒメ)は天孫(アメミマ)に言いました。
「わたしはすでに妊娠しています。
天孫(アメミマ)の子をどうして海中(ウミナカ)で産めますでしょうか???だから産む時は、必ずあなたの所へと行きます。もしも私のために海辺に小屋を作って待ってくれるなら、望ましい事です」
そこで彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)は故郷に帰って、すぐに鸕鷀(ウ)の羽で屋根を葺(フ)いた産屋を立てました。その蓋(イラカ=甍=屋根の天辺部分)が出来上がる前に、豊玉姫は大きな亀に乗って、妹の玉依姫(タマヨリヒメ)を連れ、海を照らして来ました。
臨月は既に過ぎ、産まれるときが迫って来た。そこで屋根を葺き終えるのを待たずに、産屋に入りました。そしておもむろに天孫(アメミマ)に言いました。
「お産のときに、お願いですから見ないでください」
天孫(アメミマ)は内心、その言葉を怪しんでこっそり、お産の様子を覗いてしまいました。すると豊玉姫は八尋(ヤヒロ=18m)の大きな鰐(ワニ)に化けていました。しかも天孫(アメミマ)が覗いているのを知って、とても恥ずかしく思い、恨みを抱きました。
すでに子は産まれた後に、天孫(テンソン)は問いました。
「子の名前は何にするとよいか?」
豊玉姫は答えました。
「彦波瀲武鸕鷀草葺不合尊(ヒコナギサタケウガヤフキアエズノミコト)と名付けるべきです」
豊玉姫はいい終えると海を渡り、去って行きました。
これ(弟が兄を従えた件)より先のことです。
豊玉姫(トヨタマヒメ)は天孫(アメミマ)に言いました。
「わたしはすでに妊娠しています。
天孫(アメミマ)の子をどうして海中(ウミナカ)で産めますでしょうか???だから産む時は、必ずあなたの所へと行きます。もしも私のために海辺に小屋を作って待ってくれるなら、望ましい事です」
そこで彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)は故郷に帰って、すぐに鸕鷀(ウ)の羽で屋根を葺(フ)いた産屋を立てました。その蓋(イラカ=甍=屋根の天辺部分)が出来上がる前に、豊玉姫は大きな亀に乗って、妹の玉依姫(タマヨリヒメ)を連れ、海を照らして来ました。
臨月は既に過ぎ、産まれるときが迫って来た。そこで屋根を葺き終えるのを待たずに、産屋に入りました。そしておもむろに天孫(アメミマ)に言いました。
「お産のときに、お願いですから見ないでください」
天孫(アメミマ)は内心、その言葉を怪しんでこっそり、お産の様子を覗いてしまいました。すると豊玉姫は八尋(ヤヒロ=18m)の大きな鰐(ワニ)に化けていました。しかも天孫(アメミマ)が覗いているのを知って、とても恥ずかしく思い、恨みを抱きました。
すでに子は産まれた後に、天孫(テンソン)は問いました。
「子の名前は何にするとよいか?」
豊玉姫は答えました。
「彦波瀲武鸕鷀草葺不合尊(ヒコナギサタケウガヤフキアエズノミコト)と名付けるべきです」
豊玉姫はいい終えると海を渡り、去って行きました。
スポンサードリンク
解説
親子二代の嫁との確執
父親のニニギは妻のコノハナサクヤヒメが妊娠した際に「え?一回しかシテないじゃん! 絶対、俺の子じゃないよね?? どこかの国津神の子だよね!!!」と発言し、サクヤヒメにブチ切れられ、「産屋に火をつけて出産の誓約」という現代人にはよく分からない荒行を見せられます。その後は、ほとんど口も聞いてくれなくなり、悲しいを歌を残しています。
参考:第九段一書(六)—4皇孫は悲しくて歌を歌う
そしてニニギの子のヒコホホデミは嫁の「見るなよ、見るなよ」を見てしまい、愛想を尽かされます。まぁ、こっちの方はダチョウ倶楽部的な「見ろ」の逆説なのかもしれないし、「見るなよ」と言われると見ちゃう気持ちは分かるので、可哀相な気も。嫁が鰐になってたらびっくりするだろうし。
竜と鰐
本文(第十段本文−5海と陸との間を永遠に行き来出来る道)では豊玉姫は龍になっていました。ここでは鰐です。この竜と鰐に関しては、「同一のもの」を指している可能性はあります。中国南部に生息していた「鰐」が「竜」のモチーフになったという説はありますし、かなり有力です。
日本神話にこの「竜と鰐」の神話が異伝として残っていることは、史料として貴重なのではないか?と個人的には思います。
ちなみに第十段一書(一)−5櫛に火をつけて出産の様子をでは「熊鰐」と書かれています。
父親のニニギは妻のコノハナサクヤヒメが妊娠した際に「え?一回しかシテないじゃん! 絶対、俺の子じゃないよね?? どこかの国津神の子だよね!!!」と発言し、サクヤヒメにブチ切れられ、「産屋に火をつけて出産の誓約」という現代人にはよく分からない荒行を見せられます。その後は、ほとんど口も聞いてくれなくなり、悲しいを歌を残しています。
参考:第九段一書(六)—4皇孫は悲しくて歌を歌う
そしてニニギの子のヒコホホデミは嫁の「見るなよ、見るなよ」を見てしまい、愛想を尽かされます。まぁ、こっちの方はダチョウ倶楽部的な「見ろ」の逆説なのかもしれないし、「見るなよ」と言われると見ちゃう気持ちは分かるので、可哀相な気も。嫁が鰐になってたらびっくりするだろうし。
竜と鰐
本文(第十段本文−5海と陸との間を永遠に行き来出来る道)では豊玉姫は龍になっていました。ここでは鰐です。この竜と鰐に関しては、「同一のもの」を指している可能性はあります。中国南部に生息していた「鰐」が「竜」のモチーフになったという説はありますし、かなり有力です。
日本神話にこの「竜と鰐」の神話が異伝として残っていることは、史料として貴重なのではないか?と個人的には思います。
ちなみに第十段一書(一)−5櫛に火をつけて出産の様子をでは「熊鰐」と書かれています。
スポンサードリンク
SNSボタン
TWEET Facebook はてブ Google+ Pocketページ一覧
日本書紀神代下の表紙へ
- Page42 第十段一書(二)−3子孫八十連屬まで俳人(狗人)に
- Page43 第十段一書(三)−1天候が悪いと幸を得られないから
- Page44 第十段一書(三)−2罠に掛かっていた川雁を助ける
- Page45 第十段一書(三)−3大鉤、踉䠙鉤、貧鉤、癡騃鉤
- Page46 第十段一書(三)−4八尋のおおきな鰐
- Page47 第十段一書(三)−5沖つ鳥鴨着く島に我が率寝し妹は忘らじ世のことごとも
- Page48 第十段一書(四)−1八尋鰐は鰭背を立てて橘之小戸に
- Page49 第十段一書(四)−2湯津杜樹に昇って居てください
- Page50 第十段一書(四)−3三床を設けて
スポンサードリンク