第十段一書(三)−4八尋のおおきな鰐

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第十段一書(三)−4八尋のおおきな鰐

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原文

先是、豊玉姫謂天孫曰「妾已有娠也。天孫之胤豈可産於海中乎、故當産時必就君處。如爲我造屋於海邊以相待者、是所望也。」故彦火火出見尊、已還鄕、卽以鸕鷀之羽、葺爲産屋。屋蓋未及合、豊玉姫自馭大龜、將女弟玉依姫、光海來到。時孕月已滿、産期方急、由此、不待葺合、俓入居焉、已而從容謂天孫曰「妾方産、請勿臨之。」天孫心怪其言竊覘之、則化爲八尋大鰐。而知天孫視其私屏、深懷慙恨。既兒生之後、天孫就而問曰「兒名何稱者當可乎。」對曰「宜號彦波瀲武鸕鷀草葺不合尊。」言訖乃渉海俓去。

現代語訳

第十段一書(三)−4
これ(弟が兄を従えた件)より先のことです。
豊玉姫(トヨタマヒメ)は天孫(アメミマ)に言いました。
「わたしはすでに妊娠しています。
天孫(アメミマ)の子をどうして海中(ウミナカ)で産めますでしょうか???だから産む時は、必ずあなたの所へと行きます。もしも私のために海辺に小屋を作って待ってくれるなら、望ましい事です」

そこで彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)は故郷に帰って、すぐに鸕鷀(ウ)の羽で屋根を葺(フ)いた産屋を立てました。その蓋(イラカ=甍=屋根の天辺部分)が出来上がる前に、豊玉姫は大きな亀に乗って、妹の玉依姫(タマヨリヒメ)を連れ、海を照らして来ました。

臨月は既に過ぎ、産まれるときが迫って来た。そこで屋根を葺き終えるのを待たずに、産屋に入りました。そしておもむろに天孫(アメミマ)に言いました。
「お産のときに、お願いですから見ないでください」
天孫(アメミマ)は内心、その言葉を怪しんでこっそり、お産の様子を覗いてしまいました。すると豊玉姫は八尋(ヤヒロ=18m)の大きな鰐(ワニ)に化けていました。しかも天孫(アメミマ)が覗いているのを知って、とても恥ずかしく思い、恨みを抱きました。

すでに子は産まれた後に、天孫(テンソン)は問いました。
「子の名前は何にするとよいか?」
豊玉姫は答えました。
「彦波瀲武鸕鷀草葺不合尊(ヒコナギサタケウガヤフキアエズミコト)と名付けるべきです」
豊玉姫はいい終えると海を渡り、去って行きました。
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解説

親子二代の嫁との確執
父親のニニギは妻のコノハナサクヤヒメが妊娠した際に「え?一回しかシテないじゃん! 絶対、俺の子じゃないよね?? どこかの国津神の子だよね!!!」と発言し、サクヤヒメにブチ切れられ、「産屋に火をつけて出産の誓約」という現代人にはよく分からない荒行を見せられます。その後は、ほとんど口も聞いてくれなくなり、悲しいを歌を残しています。
参考:第九段一書(六)—4皇孫は悲しくて歌を歌う

そしてニニギの子のヒコホホデミは嫁の「見るなよ、見るなよ」を見てしまい、愛想を尽かされます。まぁ、こっちの方はダチョウ倶楽部的な「見ろ」の逆説なのかもしれないし、「見るなよ」と言われると見ちゃう気持ちは分かるので、可哀相な気も。嫁が鰐になってたらびっくりするだろうし。
この「見るなよ」→「見る」というパターンはツルの恩返しでも見られますし、イザナミの死後にイザナギ黄泉の国へ行ったときにも同様のことが起きていますので、「神話の決まり事」ではあります。

竜と鰐
本文(第十段本文−5海と陸との間を永遠に行き来出来る道)では豊玉姫は龍になっていました。ここでは鰐です。この竜と鰐に関しては、「同一のもの」を指している可能性はあります。中国南部に生息していた「鰐」が「竜」のモチーフになったという説はありますし、かなり有力です。
日本神話にこの「竜と鰐」の神話が異伝として残っていることは、史料として貴重なのではないか?と個人的には思います。

ちなみに第十段一書(一)−5櫛に火をつけて出産の様子をでは「熊鰐」と書かれています。
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