第十段一書(三)−3大鉤、踉䠙鉤、貧鉤、癡騃鉤

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第十段一書(三)−3大鉤、踉䠙鉤、貧鉤、癡騃鉤

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原文

及至將歸、海神乃召鯛女、探其口者、卽得鉤焉。於是、進此鉤于彦火火出見尊、因奉教之曰「以此與汝兄時、乃可稱曰『大鉤、踉䠙鉤、貧鉤、癡騃鉤。』言訖、則可以後手投賜。」已而召集鰐魚問之曰「天神之孫、今當還去。儞等幾日之內、將作以奉致。」時諸鰐魚、各隨其長短、定其日數、中有一尋鰐、自言「一日之內、則當致焉。」故卽遣一尋鰐魚、以奉送焉。復進潮滿瓊・潮涸瓊二種寶物、仍教用瓊之法、又教曰「兄作高田者、汝可作洿田。兄作洿田者、汝可作高田。」海神盡誠奉助、如此矣。時彦火火出見尊、已歸來、一遵神教依而行之、其後火酢芹命、日以襤褸而憂之曰「吾已貧矣。」乃歸伏於弟。弟時出潮滿瓊、卽兄舉手溺困。還出潮涸瓊、則休而平復。
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現代語訳

第十段一書(三)−3
(ホホデミが)本国に帰ろうというときになって、海神(ワダツミ)は鯛女(タイ)を呼び寄せて、口を探すと、釣り針がありました。それでこの釣り針を彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコオト)に献上しました。そして海神は(ホホデミに)教えました。
「この釣り針をあなたの兄に渡すときに
『大鉤(オオチ)、踉䠙鉤(ススノミヂ)、貧鉤(マヂチ)、癡騃鉤(ウルケヂ)』
と言いなさい。
言い終わって、手を嘘路にして投げてください」
(海神は)鰐魚(ワニ)を呼び寄せて、問いました。
「天神(アマツカミ)の孫(ミマ)が今から本国に帰る。お前たちは何日で送る事が出来るか?」
もろもろの鰐魚(ワニ)はそれぞれの長短に合わせて日数を申告しました。その中に一尋鰐(ヒトヒロワニ…一尋は長さの単位で1.8m)がいて、自ら言うには
「一日のうちに、到着します」
それですぐに一尋鰐魚(ヒトヒロワニ)を派遣して、(ホホデミを)送りました。

また、潮滿瓊(シオミチノタマ)・潮涸瓊(シオヒノタマ)の二種の宝物を(ホホデミに)渡し、玉の使い方を教えました。また、こうも教えました。
「兄が高いところに田を作ったら、あなたは低い土地に田を作りなさい。兄が低い土地に田を作ったら、あなたは高い土地に田を作りなさい」
海神(ワダツミ)は誠意を尽くして(ホホデミを)助けることを約束しました。

それで彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)は本国に帰り、海神の言うように一から従って行動しました。すると兄の火酢芹命(ホノスセリノミコト)は日に日にやつれて悩み苦しむようになり、言いました。
「わたしは貧しくなってしまった」
それで弟の彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)に従いました。
弟が潮滿瓊(シオミチノタマ)を出すと、兄は手を挙げて溺れ苦しみました。潮涸瓊(シオヒノタマ)を出せば、すぐに水は引いて元通りになりました。
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解説

冷静に考えたら
海神がヒコホホデミを援助する理由は
婿ってことだけだよね

婿って偉いのだろうか。

個人的コラム

古代に於いては男が女性の家に通う「通い婚」でした。そこで生まれた子供は嫁の実家で育てられます。よって古代の日本では、子供は嫁と嫁の両親から強い影響を受けます。だから、後の藤原氏は娘を天皇に嫁がせて、強い権力を得る事が出来た、わけです。

しかしながら、神話ではそれだけではない、とも思います。なにせ記紀は皇統を説明する物語です。それために男系が固定されているのですから、ここに「天皇の関係者」として関わるには基本的に天皇(皇統)と兄弟か、天皇(皇統)に嫁を送る以外には無いわけです。

天津神の天孫ニニギと、大山祇神(オオヤマヅミノカミ)の娘のコノハナサクヤヒメが結ばれます。そのニニギコノハナサクヤヒメの子供の「ヒコホホデミ」。

そのヒコホホデミと日向神話の海神の娘のトヨタマヒメが結ばれます。ヒコホホデミとトヨタマヒメの子の「ウガヤフキアエズ」がやはり海神の娘のタマヨリヒメと結ばれます。この子供が神武天皇です。

これだけでは終わらない。初代天皇の神武天皇日本書紀では出雲のオオクニヌシの子のコトシロヌシの娘と結ばれ、また次の綏靖天皇もコロシロヌシの娘と結ばれています。

日本の世界観
私たちは何となく、アマテラスニニギならば、アマテラスの方が偉いと思っています。なぜか? アマテラスの方がよりオリジナルで霊威も強いと考えているからです。ニニギの方が血が薄く霊威が弱いと考えているからです。

しかし、それは日本の世界観では間違っています。

日本はゴリゴリの農耕民族です。農耕民族は一粒の種子が秋には大きく実ることを知っています。まして稲作は非常に効率が良いものです。日本人にとって成長した稲穂よりも、これから何十倍にも膨れ上がる大きな可能性を持った種子の方がより強い魔力を持っていると考えていました。だから日本では新しいものの方が霊威が強く、幼いものの方が魅力的に映ります。
●子より親、親より祖父母の方が血が濃く、強い、もしくは偉いという考えは儒教的な感覚です。
●日本は戦争の際に儒教的な考えを国家神道に組み込んでいました。

混血による強化
個人的な仮説なのですが……
日本の古代の世界観や宗教観では「子の方が強い」という考えがあったのだと思っています。「子の方が強い」という言い方は行き過ぎかもしれません。ようは「親の方が血が濃くて強い」という感覚が無い、ということです。その原因は上にあげた「農耕民族だから」です。

その結果として記紀のような、混血を繰り返すことで、皇統の意味を強化する神話が生まれた。山の神の娘、海の神の娘との間に生まれた天皇という血統には強い霊威があり、天地海を統べる理由があるわけです。

そこでコトシロヌシの娘が重要になります。
なぜコトシロヌシの娘が嫁に来ているのか??
コトシロヌシが実在の氏族の娘を指しているのか?(おそらくは葛城の氏族の娘という意味)
それとも、託宣の神という「神と人をつなげる」性質を天皇家が持っていた(持っている)、という意味なのか?です。

歴史としては前者の方が面白い。葛城王朝という言葉が出てくるくらいですからね。でも、後者ではないでしょうか?? もしくは両方か。
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