道臣命の密命と歌

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冬十月癸巳朔(二)道臣命の密命と歌

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原文

謠意、以大石喩其国見丘也。既而餘黨猶繁、其情難測、乃顧勅道臣命「汝、宜帥大來目部、作大室於忍坂邑、盛設宴饗、誘虜而取之。」道臣命、於是奉密旨、掘窨於忍坂而選我猛卒、與虜雜居、陰期之曰「酒酣之後、吾則起歌。汝等聞吾歌聲、則一時刺虜。」已而坐定酒行、虜不知我之有陰謀、任情徑醉。時道臣命、乃起而歌之曰、

於佐箇廼 於朋務露夜珥 比苔瑳破而 異離烏利苔毛 比苔瑳破而 枳伊離烏利苔毛 瀰都瀰都志 倶梅能固邏餓 勾騖都都伊 異志都々伊毛智 于智弖之夜莽務

現代語訳

歌の心は大きな石を国見丘に例えています。
(既に敵は撃破したのですが)残りの敵がまだ多くて、その数が解りませんでした。そこで密かに道臣命(ミチノオミノミコト)に命じました。
「お前は大來目部(オオクメラ)を引き連れて、大室(オオムロ)を忍坂邑(オシサカノムラ)に作り、そこで宴饗(トヨノアカリ=宴会のこと)を盛大に催して、敵を誘い寄せて討ち取れ」
道臣命(ミチノオミノミコト)は密命を受けて、忍坂(オシサカ)を掘って室(ムロ)を立てて、勇猛な兵士を選んで、敵兵を混ざって座りました。そして陰で命じました。
「酒酣(サケタケナワ…今で言う所の『宴もたけなわ』)の後、わたし(=道臣命)は立ち上がり、歌を歌う。お前たちは、私の声を聞いたらすぐにいっせいに敵を刺せ」
座る場所に座って酒盛りしました。敵は密命を知らず、心のままに、ほしいままに酔いました。
そして道臣命(ミチノオミノミコト)は立ち、歌を歌いました。

忍坂の大室屋に 人多に
入り居りとも 人多に
来入り居りとも みつみつし
来目の子等が 頭椎(クブツツ)い 石椎(イスツツ)い持ち
撃ちてし止まむ
歌の訳
忍坂の大室に沢山の人が入っている。
沢山の人が来ているが、強い強い来目の兵士が頭椎(太刀の種類)や石椎(太刀の種類)で討ち倒すぞ
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