波沙寐錦は微叱己知波珍干岐を人質に

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神功皇后(十二)波沙寐錦は微叱己知波珍干岐を人質に

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原文

新羅王波沙寐錦、卽以微叱己知波珍干岐爲質、仍齎金銀彩色及綾・羅・縑絹、載于八十艘船、令從官軍。是以、新羅王常以八十船之調貢于日本国、其是之緣也。於是、高麗・百濟二国王、聞新羅收圖籍降於日本国、密令伺其軍勢、則知不可勝、自來于營外、叩頭而款曰「從今以後、永稱西蕃、不絶朝貢。」故因以、定內官家屯倉。是所謂之三韓也。皇后從新羅還之。

十二月戊戌朔辛亥、生譽田天皇於筑紫。故時人號其産處曰宇瀰也。

現代語訳

新羅の王の波沙寐錦(ハサムキム=第五代王の婆娑尼師今)は微叱己知波珍干岐(ミシコチハトリカンキ=第十七代王の奈勿尼師今の子の未斯欣のこと)を人質として、金(コガネ)・銀(シロガネ)・彩色(ウルワシキイロ)、及び、綾(アヤキヌ=絹織物)・羅(ウスハタ=織り方の特殊な薄い絹織物)・縑絹(カトリノキヌ=細かく硬く縫った絹織物)をもたらして、八十艘(ヤソカハラ=たくさんの)船に載せて、官軍に従いました。新羅の王は常に八十船(ヤソフネ)の貢物を日本国(ワガミカド)に献上するようになりました。これがその由縁です。

高麗(コマ)・百済(クダラ)のふたつの国の王は、新羅が図籍(シルシヘフミタ=地図と戸籍)を差し出して、日本国に降伏したと聞いて、密かに軍勢(ミイクサノイキオイ)を伺いました。すぐに勝てないとわかり、自ら営(イオリ)の外に来て、頭を地面に叩きつけて言いました。
「今より以後、永遠に西蕃(ニシノトナリ=西の異民族)と称し、朝貢(ミツキタテマツルコト=朝廷に貢物を送ること)を絶えず行います」
それで内官家屯倉(ウチツミヤツケ=天皇の直轄領)を定めました。これがいわゆる三韓(ミツノカラクニ)です。皇后は新羅から帰りました。

12月14日。筑紫で譽田天皇(ホムタノスメラミコト)が生まれました。それでその時代の人はその生まれた場所を宇瀰(ウミ=福岡県糟屋郡宇美町)と名付けました。
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解説

未斯欣が人質として倭国に連れられるのは朝鮮の歴史書の三国史記にも三国遺事にも書かれています。三国史記によると402年としています。
新羅の王について
5代王の婆娑尼師今が17代王の奈勿尼師今の子の未斯欣を日本に人質に送った、というのは一体どういうことかと不審に思う人が多いかと思います。非常に矛盾しています。
まず、この矛盾の可能性としては波沙寐錦(ハサムキム)が第五代王の婆娑尼師今とイコールということがまちがっているかもしれません。しかし、おそらくというか間違いなく三国史記の「6代から16代までの王の記述が創作」だと考えたほうが自然です。
三国史記の歴史観
三国史記は12世紀に成立した本で、そもそも日本書紀(8世紀成立)のかなり後に書かれた本です。三国史記は高麗の時代に書かれ、高麗は新羅から国を譲られたという形になっています。高麗は「新羅という正当な朝鮮半島の支配者から譲られた」と主張する目的で三国史記を編纂しました。よって三国史記には「新羅は歴史がある強い国家だ」と主張する意図があります。

新羅は珍妙な王朝を形成しています。初代の王から4世紀の奈勿尼師今の時代までは「朴」「昔」「金」という三氏が王朝を代わる代わる受け継いでいるのです。こんな妙な話はありません。そして奈勿尼師今からは「金」が続き10世紀までは「金」です。この奈勿尼師今からが実在する新羅王とされ、これ以前は神話とされます(ただし朝鮮の人は史実だと思っている)。
●儒教の国では国王の座は、血筋ではなく譲られるのが良いことという考えがある。三氏が代わる代わる治めたのはそういう考えから作られた「神話」だと思われる。
●ただし建国者として、一代王から数代は実在したのではないか? そのせいで5代王が17代王の子供を人質に…となるのではないか?
●そして子供を人質に取られた奈勿尼師今が王になるということは、奈勿尼師今は日本の傀儡政権だったと考えたほうが自然。

高麗が新羅の歴史を作ろうとしたのに、それを日本書紀が暴いてしまう。なんという皮肉なことでしょう。

ちなみに4代王の昔脱解は倭人であり、その臣下の瓢公も倭人です。また二代目の南解次々雄は「ナカツツノオ」と読めます。住吉三神の一柱と同じ名前です。これらを考慮すると新羅の建国には倭人、というか大和朝廷か九州の豪族が関わったと考えるのが自然です。
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