童女の歌と謀反の兆候

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崇神天皇(十三)謀反の徴(日本書紀)

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原文

於是、大彦命異之、問童女曰「汝言何辭。」對曰「勿言也、唯歌耳。」乃重詠先歌、忽不見矣。大彦乃還而具以狀奏。於是、天皇姑倭迹々日百襲姫命、聰明叡智、能識未然、乃知其歌怪、言于天皇「是武埴安彦將謀反之表者也。吾聞、武埴安彦之妻吾田媛、密來之、取倭香山土、裹領巾頭而祈曰『是倭国之物實』乃反之。物實、此云望能志呂。是以、知有事焉。非早圖、必後之。」

現代語訳

大彦命(オオビコノミコト)は怪しいと思い、童女(ワラワメ)に問いました。
「お前が言ったことはどういうことだ?」
童女は答えました。
「言ってません。
ただ歌っただけです」
それでまたさっきの歌を歌い、たちまち見えなくなりました。
大彦命はすぐに帰り、詳細に見た事を報告しました。天皇の大叔母の倭迹々日百襲姫命(ヤマトトトヒモモソヒメミコト)は聡明で物知りで、未来の事も分かる人です。その歌の怪(シルシ)を知って、天皇に言いました。
「これは武埴安彦(タケハニヤスヒコ)が謀反(ミカドカタブケ)を起こす表(シルシ)でしょう。私が聞いた所によると、武埴安彦(タケハニヤスヒコ)の妻の吾田媛(アタヒメ)は密かに倭の香山(カグヤマ)に来て、土を取り、領巾(ヒレ=女性が襟から肩にかけた布)の頭(ハシ)に包んで呪いを掛けて『これは倭国(ヤマトノクニ)の物実(モノシロ…モノは霊、シロは代表)』と言って、帰って行ったのです。
物實は望能志呂(モノシロ)と読みます。

何か事件があると知りました。速やかに対処しなくては、必ず手遅れとなるでしょう」
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解説

ヤマトトトヒモモソヒメ崇神天皇から見ると祖父の姉か妹にあたります。なんとなく「巫女」イメージが強いので、ピチピチしていそうですが、老婆です。
女性には霊力が!
ここでは童女が現れて歌を歌い、その歌を解釈するのがヤマトトヒモモソヒメです。どうも古代の日本人は「女性」と特別視していたのが分かります。「霊力」があるのは女性というのが定番だったと。そう考えると埴安彦の妻、吾田媛(アタヒメ)も土で呪いを掛けたのだから、霊力があったのでしょう。
ここを読む限り、古代では女性もしっかりと歴史を動かしています。

ここでの「土」は具体的には粘土のこと。日本人は「土」を特別視していたのでしょう。畑の土が無いと植物が育たず、土の「質」が収量に大きく関わるからです。また「土器」が生活を支えていたのですから、生活を依存していた…というイメージを持っていたも不思議ではないです。
それに日本人は山から「穀物神」がやってくると考えていました。この穀物神が里の田畑に宿って生育させるのだと信じていました。だから山は特別です。山の土には神の力があると考えたハズです。それが「土で呪い」という行動に出たのでしょう。
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