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イザナミの苦しみ
漢字・読み | イザナミノクルシミ |
原文
此の子を生みしに因りて、美蕃登炙かえりて病み臥せり。多具理邇生 れる神の名は、金山毘古神、次に金山毘売神。次に屎に成れる神の名は、波邇夜須毘古神、 次に波邇夜須毘売神。次に尿に成れる神の名は、弥都波能売神、次に和久産巣日神。此の神の子は、 富宇気毘売神と謂ふ。故、伊邪那美神は、火の神を生みしに因りて、遂に神避り坐しき。
凡べて伊邪那岐、伊邪那美の二はしらの神、共に生める島、壱拾肆島、神、参拾伍神。
凡べて伊邪那岐、伊邪那美の二はしらの神、共に生める島、壱拾肆島、神、参拾伍神。
現代語訳
![](https://nihonsinwa.com/photo/uLLJiS.jpeg)
この子供(カグツチ神のこと)を産んだことで、イザナミは女陰(女性器)を焼けどして倒れてしまいました。
その苦しみから嘔吐して生まれたのが
金山毘古神(カナヤマヒコノカミ)と金山毘売神(カナヤマヒメノカミ)。
次に苦しみから脱糞し、糞から生まれたのが
波邇夜須毘古神(ハニヤスヒコノカミ)と波邇夜須毘売神(ハニヤスヒメノカミ)。
次に苦しみから失禁し、尿から生まれたのが
弥都波能売神(ミズハノメノカミ)と和久産巣日神(ワクムスビノカミ)。
和久産巣日神の子供は富宇気毘売神(トヨウケビメノカミ)です。
そしてイザナミは火の神を産んだことで黄泉国(死者の国)へといってしまいました。
イザナギとイザナミが産んだ島は14島、
神は35柱となりました。
その苦しみから嘔吐して生まれたのが
金山毘古神(カナヤマヒコノカミ)と金山毘売神(カナヤマヒメノカミ)。
次に苦しみから脱糞し、糞から生まれたのが
波邇夜須毘古神(ハニヤスヒコノカミ)と波邇夜須毘売神(ハニヤスヒメノカミ)。
次に苦しみから失禁し、尿から生まれたのが
弥都波能売神(ミズハノメノカミ)と和久産巣日神(ワクムスビノカミ)。
和久産巣日神の子供は富宇気毘売神(トヨウケビメノカミ)です。
そしてイザナミは火の神を産んだことで黄泉国(死者の国)へといってしまいました。
イザナギとイザナミが産んだ島は14島、
神は35柱となりました。
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解説
神は死んだ!
なんとイザナミはこのくだりで死んでしまいました。不老不死ではなく、誰かに殺されるのではなく、医療ミスというか(嘘)、事故死です。火の神を産んで死んでしまうなんて、なんかマヌケ。でも火は人間にとってとても重要なもの。それを命を賭して産み落としたイザナミの存在意義は大きいのではないでしょうか。
カグツチを産んだことで産道を火傷したことは、火山の噴火を表しているという説もあります。その後に吐しゃ物(ゲロ)から生まれるのが金属の神である「カナヤマヒコ・カナヤマヒメ」。なんでゲロから金属の神かというと、ゲロの形状が金属を溶かしたものに似ているからです。金属を溶かすには火が必要です。
次は脱糞して糞からハニヤスヒコとハニヤスヒメが生まれました。この神は糞がらみで肥料・農耕の神ともされますが、漢字で書くと「埴安」――埴輪の「埴」が当てられているように「陶器の神」です。陶器を焼くには火が必要です。これもカグツチとの関連があります。
次は尿からミツハノメ神とワクムスビ神が生まれます。どうしてココだけ対の名前ではなくて別の名前二柱なんでしょうね。ミツハノメは水霊で、谷を走る水だとか灌漑用水を司る神です。ワクムスビは植物がスクスクと育つ過程を表現した農耕の神。ここでは確かにカグツチは関係がありません。
農業に関係する神々
火を使って金属を加工して農具が出来ます。古代においては鉄製のスキやクワといった農具は「革命」といっていいほどの発明だったハズです。
次が陶器。陶器だとか土器は穀物の種子の保存のために欠かせません。むき出しにおいてけばスグにネズミに食べられます。大事な食糧でもありますし、翌年の種子です。食べられてはたまりません。また、ネズミは多くの病原菌を持っていて、繁殖すると疫病も増えます。古代では生きるということのかなりの部分がネズミとの戦いだったとも言われています。陶器で保管するということは古代の農業にとって大事な要素だったわけです。
そして灌漑用水と植物の成長を司る神が並び、最後にトヨウケビメが現れます。トヨウケビメは伊勢神宮ではアマテラスに食物をささげる役割の女神。農業に関わる神が並び、最後にトヨウケビメが出てくる――ちょっとニヤリとしませんか??
わずかな言葉と神の名前でここまでを言い表すなんてなかなか深いと思いませんか?
なんとイザナミはこのくだりで死んでしまいました。不老不死ではなく、誰かに殺されるのではなく、医療ミスというか(嘘)、事故死です。火の神を産んで死んでしまうなんて、なんかマヌケ。でも火は人間にとってとても重要なもの。それを命を賭して産み落としたイザナミの存在意義は大きいのではないでしょうか。
カグツチを産んだことで産道を火傷したことは、火山の噴火を表しているという説もあります。その後に吐しゃ物(ゲロ)から生まれるのが金属の神である「カナヤマヒコ・カナヤマヒメ」。なんでゲロから金属の神かというと、ゲロの形状が金属を溶かしたものに似ているからです。金属を溶かすには火が必要です。
次は脱糞して糞からハニヤスヒコとハニヤスヒメが生まれました。この神は糞がらみで肥料・農耕の神ともされますが、漢字で書くと「埴安」――埴輪の「埴」が当てられているように「陶器の神」です。陶器を焼くには火が必要です。これもカグツチとの関連があります。
次は尿からミツハノメ神とワクムスビ神が生まれます。どうしてココだけ対の名前ではなくて別の名前二柱なんでしょうね。ミツハノメは水霊で、谷を走る水だとか灌漑用水を司る神です。ワクムスビは植物がスクスクと育つ過程を表現した農耕の神。ここでは確かにカグツチは関係がありません。
農業に関係する神々
火を使って金属を加工して農具が出来ます。古代においては鉄製のスキやクワといった農具は「革命」といっていいほどの発明だったハズです。
次が陶器。陶器だとか土器は穀物の種子の保存のために欠かせません。むき出しにおいてけばスグにネズミに食べられます。大事な食糧でもありますし、翌年の種子です。食べられてはたまりません。また、ネズミは多くの病原菌を持っていて、繁殖すると疫病も増えます。古代では生きるということのかなりの部分がネズミとの戦いだったとも言われています。陶器で保管するということは古代の農業にとって大事な要素だったわけです。
そして灌漑用水と植物の成長を司る神が並び、最後にトヨウケビメが現れます。トヨウケビメは伊勢神宮ではアマテラスに食物をささげる役割の女神。農業に関わる神が並び、最後にトヨウケビメが出てくる――ちょっとニヤリとしませんか??
わずかな言葉と神の名前でここまでを言い表すなんてなかなか深いと思いませんか?
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ところで
古事記原文では
「美蕃登(みほと)炙(や)かえりて」
とあります。
このミホトが女陰です。
ミホトですよ。
響きがなんかいいですよね。
これならテレビやラジオで言っても
いやらしくないですよ。
「美蕃登(みほと)炙(や)かえりて」
とあります。
このミホトが女陰です。
ミホトですよ。
響きがなんかいいですよね。
これならテレビやラジオで言っても
いやらしくないですよ。
個人的コラム
古代の出産の厳しさ
カグツチは火の神です。同時に火山の神です。噴火して山が出来、山に水が蓄えられて川となって流れ出て、農業用水となります。また古代では焼畑農業もやっていたので、火はすべてを焼き尽くすと同時に、浄化し土を肥やす存在でもあったはずです。また火は鉄を生み出すのに必要です。鉄器の農機具は農業に革命を起こし、生活を豊かにしました。
だからカグツチはイザナミを死に導いてしまうほどの力があったのだと思います。ですが、それだけではないでしょう。
そもそも女性の出産は危険
現在でこそ、出産による死亡は少なくはなりましたが、それでも様々なリスクがあります。子供が死ぬだけでなく、母体も死ぬことは珍しいことではなかったはずです。
水田が広まって以降は、定住が可能になり、人々の生活は「人手があればあるほど、余剰生産が可能になる」というかつてない状況になります。今までは面積当たりで生活できる人間の人数が限られており、人口が増えすぎるのもリスクでした。しかし連作障害のない、面積当たりの収穫効率のいい水田は耕作面積が増えれば増えるほどに集落が豊かになるのです。それまでの単なる農業とは全く違います。そこでは、他者の土地を奪う武力よりも、人手が増える女性の出産こそが繁栄のカギでした。女性の価値は高かったと思います。
神であるイザナミが出産の中で死んでしまうのは、古代において、出産の失敗(母体の死)がとんでもない悲劇であり、日常的な出来事だったからではないでしょうか。
カグツチは火の神です。同時に火山の神です。噴火して山が出来、山に水が蓄えられて川となって流れ出て、農業用水となります。また古代では焼畑農業もやっていたので、火はすべてを焼き尽くすと同時に、浄化し土を肥やす存在でもあったはずです。また火は鉄を生み出すのに必要です。鉄器の農機具は農業に革命を起こし、生活を豊かにしました。
だからカグツチはイザナミを死に導いてしまうほどの力があったのだと思います。ですが、それだけではないでしょう。
そもそも女性の出産は危険
現在でこそ、出産による死亡は少なくはなりましたが、それでも様々なリスクがあります。子供が死ぬだけでなく、母体も死ぬことは珍しいことではなかったはずです。
水田が広まって以降は、定住が可能になり、人々の生活は「人手があればあるほど、余剰生産が可能になる」というかつてない状況になります。今までは面積当たりで生活できる人間の人数が限られており、人口が増えすぎるのもリスクでした。しかし連作障害のない、面積当たりの収穫効率のいい水田は耕作面積が増えれば増えるほどに集落が豊かになるのです。それまでの単なる農業とは全く違います。そこでは、他者の土地を奪う武力よりも、人手が増える女性の出産こそが繁栄のカギでした。女性の価値は高かったと思います。
神であるイザナミが出産の中で死んでしまうのは、古代において、出産の失敗(母体の死)がとんでもない悲劇であり、日常的な出来事だったからではないでしょうか。
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