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古語拾遺11 吾勝尊
投稿日時:2019-01-24 00:46:57TWEET Facebook はてブ Google+ Pocket
原文
天祖吾勝尊 納高皇産靈神之女 栲幡千千姫命 生 天津彦尊 號曰皇孫命 【天照大神高皇産靈神二神之孫也 故曰皇孫也】 既而 天照大神高皇産靈尊 祟養皇孫 欲降爲豊葦原中国主 仍 遣經津主神 【是 磐筒女神之子 今 下總国香取神是也】 武甕槌神 【是甕速日神之子 今 常陸国鹿嶋神是也】 駈除平定 於是 大己貴神及其子事代主神 並皆奉避 仍 以平国矛 授二神曰 吾以此矛 卒有治功 天孫 若用此矛治国者 必當平安 今我將隱去矣 辭訖遂隱 於是 二神 誅伏諸不順鬼神等 果以復命
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現代語訳
天祖(アマツミオヤ)である吾勝尊(アカツノミコト)は高皇産靈神(タカミムスビノカミ)の娘の栲幡千千姫命を嫁にして、天津彦尊(アマツヒコ)を産みました。皇孫命(スメミマノミコト)…
と言います。
まさしく、天照大神(アマテラスオオミカミ)・高皇産霊神(タカミムスビノカミ)は皇孫を崇め奉り、養育しまして、天から地上に降して、豊葦原(トヨアシハラ)の中国(ナカツクニ)の主(キミ)としようと思いました。そこで、経津主神(フツヌシノカミ)…
と、武甕槌神(タケミカヅチノカミ)…
を派遣して、駆除し、祓い、平定し、鎮めました。これで大己貴神(オオナムチノカミ)と、その子の事代主神(コトシロヌシノカミ)は皆、(地上の支配者から)去り、譲った。それで(大国主と事代主は)国を平定した矛を二柱(=ここでは経津主神と武甕槌神)の神に授けて、
「私は、この矛で、この地を統治した。天孫よ、もし、このこの矛を用いて国を治めたならば、必ずうまくいくでしょう。わたしは冥界に隠れましょう」
と言いました。言い終えると、ついに隠れてしまいました。それで二柱の神はもろもろの従わない鬼神(アラブルカミ)たち誅伐して、従わせ、ついに天界に報告しました。
と言います。
まさしく、天照大神(アマテラスオオミカミ)・高皇産霊神(タカミムスビノカミ)は皇孫を崇め奉り、養育しまして、天から地上に降して、豊葦原(トヨアシハラ)の中国(ナカツクニ)の主(キミ)としようと思いました。そこで、経津主神(フツヌシノカミ)…
これは磐筒女神(イワツツノメノカミ)の子です。現在の下総国の香取神がこれです。
と、武甕槌神(タケミカヅチノカミ)…
甕速日神(ミカハヤヒノカミ)の子です。現在、常陸国の鹿島神がこれです。
を派遣して、駆除し、祓い、平定し、鎮めました。これで大己貴神(オオナムチノカミ)と、その子の事代主神(コトシロヌシノカミ)は皆、(地上の支配者から)去り、譲った。それで(大国主と事代主は)国を平定した矛を二柱(=ここでは経津主神と武甕槌神)の神に授けて、
「私は、この矛で、この地を統治した。天孫よ、もし、このこの矛を用いて国を治めたならば、必ずうまくいくでしょう。わたしは冥界に隠れましょう」
と言いました。言い終えると、ついに隠れてしまいました。それで二柱の神はもろもろの従わない鬼神(アラブルカミ)たち誅伐して、従わせ、ついに天界に報告しました。
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解説
吾勝尊
古事記ではアマテラスとスサノオの誓約で生まれた最初の神のこと。オシホミミ神に当たる。血統上はアマテラスの子供。
天津彦尊
ニニギノミコトのこととされる。ここの文章は日本書紀の「第九段本文―1 葦原中国の邪神を追い払って平定したい」の一文と内容はほぼ同じ。ニニギを皇孫と表記するのは日本書紀でも見られるので、一般的な表現だったと思われる。ただ古語拾遺にははっきりと天孫は「アマテラスとタカミムスビの孫」であることが強調するように書かれている。天皇はアマテラスとタカミムスビの子孫であるからこそ、特別であるというのがあったよう。
経津主神と武甕槌神
古事記では派遣されたのはタケミカヅチのみ。日本書紀では古語拾遺と同じく経津主神と武甕槌神が派遣される。フツヌシ・タケミカヅチという順番で記述されるのは、本来はフツヌシがメインだったからだと思われる。古語拾遺は斎部氏が中臣氏(=タケミカヅチを祀る氏族で藤原氏と同族)が憎くて書いたとも言われるが、日本書紀も同じ順番で書かれているので、憎しみが先立っているとは言えない(ただし、「第九段一書(一)―4天津日嗣は天地の在る限り永遠です」では順番が逆になっている)。
国譲り
大国主と事代主が去り、地上の支配権は高天原の神へと譲られた。冥界に隠れた…という表現が「死んだ」という意味でとらわれがちだけど、古代の世界観では死後の世界と現世は行き来できない「異世界」ではなく、どちらも繋がっているという世界観だったので、文字通り「隠れた」=「隠居した」と捉えていいと思う。
古語拾遺では話を端折っているのだけど、「矛」のくだりを残したのはこの部分が大事だったからでしょうね。
古事記ではアマテラスとスサノオの誓約で生まれた最初の神のこと。オシホミミ神に当たる。血統上はアマテラスの子供。
天津彦尊
ニニギノミコトのこととされる。ここの文章は日本書紀の「第九段本文―1 葦原中国の邪神を追い払って平定したい」の一文と内容はほぼ同じ。ニニギを皇孫と表記するのは日本書紀でも見られるので、一般的な表現だったと思われる。ただ古語拾遺にははっきりと天孫は「アマテラスとタカミムスビの孫」であることが強調するように書かれている。天皇はアマテラスとタカミムスビの子孫であるからこそ、特別であるというのがあったよう。
経津主神と武甕槌神
古事記では派遣されたのはタケミカヅチのみ。日本書紀では古語拾遺と同じく経津主神と武甕槌神が派遣される。フツヌシ・タケミカヅチという順番で記述されるのは、本来はフツヌシがメインだったからだと思われる。古語拾遺は斎部氏が中臣氏(=タケミカヅチを祀る氏族で藤原氏と同族)が憎くて書いたとも言われるが、日本書紀も同じ順番で書かれているので、憎しみが先立っているとは言えない(ただし、「第九段一書(一)―4天津日嗣は天地の在る限り永遠です」では順番が逆になっている)。
国譲り
大国主と事代主が去り、地上の支配権は高天原の神へと譲られた。冥界に隠れた…という表現が「死んだ」という意味でとらわれがちだけど、古代の世界観では死後の世界と現世は行き来できない「異世界」ではなく、どちらも繋がっているという世界観だったので、文字通り「隠れた」=「隠居した」と捉えていいと思う。
古語拾遺では話を端折っているのだけど、「矛」のくだりを残したのはこの部分が大事だったからでしょうね。
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